佐藤信秋君
自由民主党・無所属の会の佐藤信秋でございますが、午前に引き続きまして、午前中の先生方の御質問を伺いながら幾つか、予定した質問よりは少し、場合によってはちょっと変えるところがあるかもしれませんが、ひとつよろしくお願いします。
最初に、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律、これはたしか昨年の三月成立でしたね。そういう意味で、元に戻るようなというか原点に戻るような話から最初に御質問させていただきたいと思うんですが、地域公共交通と一言でそう言いますが、定義とする範囲というのはどのぐらいの範囲のことを考えるのかなと。陸海空それぞれ交通手段あるわけでありますから、その中でターゲットとしようとして、ここが問題じゃないかという点について考えたこの法律の元々の原点はどんなことを期待されたのか。
その中で、地域公共交通、一般的には陸でいえばバスであり鉄道でありと、もちろんそういうことだと思いますが、環境というような問題を考えますと、あるいはまた少子高齢化という中で、できるだけ公共交通を使っていただかなければいけない。しかしながら、採算そのものは陸海空共に非常に厳しいという状況であることも確かだろうと思います。
そういう意味で最初にお伺いしたいのでありますが、地域公共交通、この活性化と再生、こういう観点からどうやって地域公共交通なるものの総体としての充実を図ろうとするのか、そういう点について最初にお聞かせ願いたいと思います。
政府参考人(榊正剛君)
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律というのは昨年成立をさせていただきました。
その中では、地域の関係者が地域公共交通について総合的に検討していきましょうということで、対象としては、まさに御指摘のように陸海空入っておりますが、基本的には、鉄道ですとか、例えば離島航路の船でございますとか、それからバス、場合によってはコミュニティーバスといったようなところまで含めて、先生御指摘のような、いわゆる高齢化に対応したような形、若しくは障害者の方にも優しいような公共交通を地域レベルで何とか守っていこうということを基本にいたしまして、例えば乗り継ぎの便を良くしますとか案内表示を良くするとか、ダイヤを改正、例えば船とバスとの関係を良くするためのいわゆる時刻表をどうやったらうまく改善できるとか、そういったような事柄もやっていこうということで、言わば地域が中心となって、交通事業者も含めて、私どもの国土交通省もそれをバックアップするというような形で発足しておるわけでございます。
佐藤信秋君
地域の取組、午前中の御議論にもありました。国としてしっかりと支えるということがまた大事なことである。一方で、事業者だけではなくて、市町村あるいはNPOあるいは都道府県、あるいは利用者そのものが主体的に一生懸命取り組んで、みんなで力を合わせてやっていこうというのがこの法律を用意した趣旨なのかなと。その中でいろんな武器、手段をそろえていかないと、山下先生の御質問じゃないですが、絵にかいたもちになりかねない、こういう問題だろうと思います。
そういう意味では、去年作って、そしてまた今年その改正という形になるわけですが、本当は、一度にどんとしっかりしたものを作れば、そんな毎年毎年やらぬでもいいじゃないかという御意見もありました。ありましたが、私自身も、気が付いたところはひとつ速やかに直していくんだということもまた一方で必要かなと、そんなふうにも思っています。
ただ、これは去年施行された、十月から施行ですね。そうすると、地域公共交通の総合計画というものをみんなで作って、そして一緒にいろんな、利用の向上であるとかあるいはまた採算性を上げるためにどうするか、そうしたことをお互いに、公共団体だけではなくて、事業者だけではなくて地域の皆さんがお考えいただく、こういう方法だろうと思っています。
絵にかいたもちになるかならないかということは、そもそものその出発点の計画作りそのものもみんなで参加しながらよりいいものを目指していこう、少しでもみんなで努力し合おうということが原点として必要なんだろうと。
そうだとすると、新しいこの改正の前と言えばいいんでしょうかね、十月から施行ですから、今までにどうした取組がなされて、そしてそれに基づいてどんな調査あるいは事業というものが進められてきているか、まず原点としてそこを押さえて教えていただければというふうに思います。
政府参考人(榊正剛君)
実は、昨年十月施行されまして、そして今年の四月からは、実は平成二十年度予算というので地域公共交通活性化・再生総合事業というのを創設させていただきまして、これらの事業を財政面でバックアップすると、こんな仕組みができたわけでございます。
この結果、今年の五月十九日までに全国六十一の地域で地域公共交通総合連携計画というのができ上がっております。そのうち五十九の地域につきましては、予算でバックアップをしようというようなこともありまして、連携計画の具体化、実施を行うための事業計画の認定をいたしたところでございます。さらに、百十二の地域で連携計画の策定のための調査を行うということを予定をいたしておりまして、これも百十二地域認定をいたしまして今から連携計画の策定を進めると、こんなことになっておりまして、今年度中にこの連携計画の策定を何とか進めていきたいというふうに思っております。したがいまして、合わせますと百七十三の地域で動きが始まっておるということでございます。
予算ができる前、いわゆる昨年度でございますけれども、昨年度からもう取組が始まっている第一号目というようなところでは、例えば富山でございますけれども、この二月二十八日に軌道運送高度化実施計画の認定を受けまして、路面電車を環状線化するといったようなことで、LRTの整備を平成二十一年の十二月開業予定というような形で推進しております。
それから、京都の宮津、京丹後市、与謝野、伊根町といったような四市町で鉄道、バスにおける連携計画をやろうというようなことがございまして、鉄道、バスにおけるダイヤの改善ですとか企画乗車券の発行ですとか、バス停の改修、移設ですとか、そういった情報提供といったような取組を具体的に推進し始めたというような感じになっておるところでございます。
今のところ全国で、まあほんの短い間だったとは思いますが、百七十ぐらいの地域で動きが始まっておりますので、更にこういった取組を進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
佐藤信秋君
百七十三地域で取組が始まった。つまり、陸海空というか、空は入っていないんでしょうかね。これも、だけど、まあ問題としては、コミューター航空といいますか、離島なんか特に問題としては意識してカバーしていくべき対象範囲だろうというふうには思っています。
ただ、今回そういう中で、鉄道ということで、地方鉄道を主としてということだろうと思いますが、上下分離、こういうことをベースにした再生事業というものが今回の法律の中に入れられる。
全体の中で、地方鉄道大変な状況であるということも確かであります。そういう意味で、急いでやれるところからやるというのは、午前中の先生方の御質問にもやれることは大いにやってほしいと、こういう御指摘がありました。私もそのとおりだと思います。
ただ、こういう場合に、ほかの手段もさることながら、大急ぎで間に合わせようということで鉄道の上下分離というのをやっていただく。これは、去年の参議院の附帯決議にも、鉄道の上下分離というのはできるだけ進むように指導、助言してくださいと、こういうお話がありましたですよね。そういう意味で、大急ぎでということが、ようやく間に合いましたと、逆に言えばそういうことなのかなと、こんなふうにも理解しています。
今回の法案が対象としているこの地方鉄道、地域の足である、しかしながら、大変な厳しい状況にあって廃線が非常に多くなっている、廃止が多くなっている。こういう状況の中で、現状は、午前中にもありました、大変厳しい、それをどういうふうに活性化していくか、そんな観点で用意されたものだというふうに理解はしていますが、そういう意味では現状の厳しさというのを端的に教えていただくとどういうことになるか、よろしく。
政府参考人(大口清一君)
まず、先生から先ほど地方鉄道とはどんなところなのかというお尋ねがございました。
それで、私ども、一般に新幹線、在来幹線、都市鉄道、そうした路線も抱えておりますけれども、今申し上げたこの都市間を結ぶようなそういう大どころですね、そこを除いたものが大体地方鉄道というふうにカウントできるかと思います。
そのうち、運営主体としては、JRあるいは一部の大手民鉄、それから地方の中小民鉄、それから旧国鉄のいわゆる特定地方交通線や整備新幹線の並行在来線として後を引き継いだ第三セクター、そんなところが地方鉄道を形成しているかと思いますが、このうち、いわゆる地方中小民鉄あるいは第三セクターと呼ばれる本当の、私どもから見て純粋なる地方鉄道というんでしょうか、そういうところは大体九十二社ございます。
そして、全部又は一部が軌道の区間も含むものもありますけれども、全体として利用者数を見てみますと大体四億三千万人、日本の人口が大体一億でございますので、大体四倍ぐらいの御利用になっているということでございまして、鉄道利用者数全体で見ると、大都市圏が多いものですから一・九%、約二%なんでございますが、されどその地方を支える、あるいは地域の活性化という面においては大変重い役割を担っているというふうに考えております。
その経営状況でございますが、九十二社中七十三社、割合にして八割の事業者がいわゆる鉄道事業の分野で経常収支ベースで赤字でございます。約八割が赤字ということでございますので、大変厳しい経営状況になっております。
その要因をよくよく分析してみますと、午前中にも大臣から答弁申し上げましたけれども、沿線の鉄道利用者、言うなれば人口が減ってきているということがまずございます。その結果として、御利用が減って、鉄道事業の収入も長期減少傾向にある。それから二つ目は、施設がやはり老朽化してきている。施設の維持に多額の費用を要するなど、保有コスト、インフラを持つコストが経営を圧迫する要因になっている。それから三つ目は、鉄道要員のいろんな合理化につきましても、経営努力だけではその路線を維持することがもう困難な場合が結構多々見られてきているというような結構厳しい状況でございます。
そうしたことから、国交省としましては、地域の暮らしあるいは観光という切り口、そうしたものを総動員しまして、地方鉄道の活性化、また、ひいては地域社会、地域経済の活性化、そうしたものにてことして御利用いただけるような役割も担っているんじゃないかなと、こうとらえております。
ちなみに、鉄道輸送サービスの維持あるいは活性化をしていく上で、路線ごとの鉄道を取り巻くまた諸状況も異なるものですから、沿線様々な状況を踏まえながら、自治体、それからNPOを含めた利用者の方々、あるいは都道府県、そうした関係者が相互に連携してスクラムを組むということが大変今重要な要素になってきているのかなと、こう思っております。
ちなみに、私の手元にあるデータだけちょっと申し上げますと、さっき申し上げましたように、九十二社のうち民鉄五十三社、それから三セクが三十九社ということでございますが、それを今度は居住人口の関係で分類してみますと、全社平均、つまり九十二社の大体平均で、沿線人口が十四万人というのが平均でございます。このうち、黒字を出しているところが大体十六万五千人ぐらいの居住人口、それに対して赤字の平均のところが十三万三千人ということで、実はこの十四万人ぐらいの平均のところのちょっと上、ちょっと下というんでしょうか、一万、二万というのはやはりちょっとじゃないんでしょうけれども、かなり大きな開きはあるんでしょうけれども、ちょっと人が利用すれば黒字に行くなというこの一押しがやはり必要だということが私どもの手元の分析でも言えるのではなかろうかなと、こうとらえているところでございます。
ちょっと長くなりましたけれども、私どもの評価でございます。
佐藤信秋君
今のお答えで、沿線人口というお話でしたが、それは鉄道の線の全体に対してその沿線の住民の数を全部合計したら今の十四万六千あるいは十三万と、こういうふうに分類されるものと、こう理解しましたが、そうだとするとといいますか、そういう中で経営改善、こういう努力をしていこうとすると、同じ沿線が十五万人でも、うまく何とかいきそうなところと、いっているところとそれはなかなか大変厳しいというところとあって、あるいは十万ちょっとでも何とか頑張っていますよ、こんな例もいろいろあるんだろうと思います。
連携計画というものを作る大前提として、今までのノウハウの活用というのも午前中の御質問にもありましたけれども、そうだとするとどんな事例、いろんな事例があるんだと思いますけれども、どんな事例があって、どういう観点から利用の促進であるとか、あるいは少しでも立ち上がってもらうための武器、手段、どういうものをやっていったらうまくいっているとかいってないとか。
千葉の小湊鉄道というのが、あれ、しょうゆのせんべいでしたか、たしか、本業ではうまくいかないんですね、本業ではうまくいかないけれども、しょうゆのたしかぬれせんかなんか、ぬれせんべいで一生懸命頑張って、経営全体としては何とかやっていけている、こんな事例もあります。
そういう意味では、ノウハウの活用、これをまずまとめていただくというのも必要なことかなと。午前中にもありました、マニュアルじゃないですけれども、そうしたガイドブックじゃないけれども、御案内の、こんなふうにやって一生懸命頑張っているところがあるんですよと、そんなふうなマニュアルのようなものも世の中にお示ししながら、一緒に連携計画を考えていきましょう、こういうことが必要かと思いますが、いかがでしょう。
政府参考人(大口清一君)
先生御指摘のように、様々な事例が各地に出てきておりまして、そういう中で私ども、今回の法案を提出させていただく中で大変参考になるものもございました。
ここで簡単にちょっと御披露申し上げますと、例えばえちぜん鉄道というのが、これは福井県の方にございますが、これはえちぜん鉄道と呼ばれる前は京福電気鉄道ということで、大阪の京阪鉄道の系列の会社がこの鉄道を運営していたわけでございます。それで、輸送人員の減少と、それから二度にわたりまして列車衝突事故を起こしまして、平成十三年に越前線の廃止届出を提出しました。その存続が危ぶまれたわけでございますが、そのときに福井県とそれから沿線市町村が協議しまして、沿線市町村による第三セクターえちぜん鉄道を設立して、存続のためのいろんな方策を練り上げながら施策を構築したというのがございました。
ちなみに、いったん実は鉄道を中止したわけでございますが、ピーク時の通学、通勤客がバスでは賄えなかった。それから、雪の日にやはりほとんどもうバスだと遅れて、なかなか通学でも学校に間に合わないというような方が出まして、地元としては、これは鉄道を今まで軽んじていたけれどもこれは是非とも復活しなきゃいけないなということから、えちぜん鉄道ということで復活をしてきたという事例でございます。
この場合に三つ大きなポイントがございまして、一つは、えちぜん鉄道が取得する施設に係る費用、それから運転再開に必要な工事費、これを県が補助を大々的にしました。それから、維持管理していくための施設整備費及び運営費について、沿線市町村などが補助をしたということでございます。それから三つ目は、これは地元の利用者の方々の力合わせなんでございますが、イベント列車の運行に合わせて様々なネットワークでイベント列車にお客を呼び込む。それから、先日もテレビで紹介されていましたが、女性が十数人アテンダントということでそれに添乗しまして、それでお年寄りからいろんな方々、観光客までも含めまして、その方々のニーズをすべてそのアテンダントが一義的には引き受けて、御説明なり、あるいは次のバス路線につなぐ場合のバスのダイヤまで全部調べてその方がお教えするというようなことをなさっております。
まず、こんなことを総合しながら、十五年に開業しまして以降、年々輸送人員が増加していまして、十八年度は開業時に比べて倍以上の増加になったということでございます。また、収支の面でも経常赤字が大幅に縮減してきておりまして、経営改善が相当進んでいるというふうに私どもは評価しております。
それから、あと、和歌山県の和歌山電鐵貴志川線というものがございました。これにつきましても、平成十五年にそれまでの運行主体だった南海電鉄が貴志川線の廃止の検討を表明したことによりまして、その存続が危ぶまれたわけでございます。このため、沿線自治体が任意の協議会を設置しまして、大々的な、いろんな方が参画する議論をして、地域において路線の存続の意義が非常に高いという結論に至ったことから、その方策としてやはり幾つかの柱を立てて、それを確実に実行したということであります。
一つは、沿線自治体が鉄道用地を買い取りまして、運行主体、これは和歌山電鐵ということになりますが、その運行主体に無償貸与する、土地を貸与する。それから二つ目として、沿線自治体が運行主体に対して運営費あるいは変電所の修繕費を補助するということ。それから、三つ目が極めてユニークなんでございますが、地元特産がイチゴなんでございますけれども、それをテーマにしたいちご列車、こういうものを運行するなどして、また貴志川の最終駅には猫の駅長を配置するなどして、今や観光客が相当入るようになったというような取組でございます。
こうした取組によって和歌山電鐵は、十八年四月に新たな運営主体ができて以降でございますが、対前年度比で一〇%増加ということでございまして、また収支の面でも赤字が大幅に縮減されて現在経営改善が進みつつあるというような状況でございます。
こんな多々事例を総合集約しながら、何が一番大事なスキームなのかということを、そのエッセンスを盛り込んだのが今回の法案だというふうにとらえております。
長くなって済みません。
佐藤信秋君
大臣、誠に御苦労さまでございます。質疑の方、鉄道局長あるいは総合政策局長とやらせていただいて、大臣お気付きの点があればまたお答えいただくというようなことでお願い申し上げたいと思います。
大前提として一つ伺っておくのを忘れました。地方鉄道といいますが、地域公共交通ですから、その中の鉄道と、こういうことになると、対象となり得るという問題でいえばJRから本当に今お話しの単線、一つの線の地方鉄道までと、こう理解していいのか、それとも今のお話の九十二社といいますか、地域にごくごく限定された地方鉄道を対象にする、こういうことなのかどうか。
政府参考人(大口清一君)
狭い意味では、今、九十二社というのが本当に純粋に地方鉄道というふうにとらえられると思いますが、広い意味では、先ほど申し上げました並行在、整備新幹線に伴ってできる並行在、あるいはJRの運営している地方鉄道等々を含めて対象にはなり得ると思います。
ただ、あえて申し上げますと、整備新幹線に伴って出てきている並行在は、別途その整備新幹線問題の中で並行在来線支援スキームというのがございますので、そうしたような支援措置が別途あるということであります。
それから、JRそのものは、特に分割・民営した後に、特に本州三社等についてはきちんと維持していくと、全体を維持していくんだということが一つ大前提にございますので、そこで何かこのスキームに直ちにというわけではないというふうに理解しております。
佐藤信秋君
そこで、主としてといいますか、武器、手段として、一番今回のこのスキームで是非やりたいと、こういうことで御提案いただいているのが再構築事業であり、その一番の柱は、これは第三種事業者として公共団体が、市町村限定ではないのかもしれませんが、都道府県でもいいのかもしれませんが、そこも教えていただきたいんですが、用地、資産を買い取ると、そしてそれを無償で貸与する、さらに、運営等についてみんなで利用、増資を図りながら経営改善を少しでもやっていって、継続的に地域住民の足が確保できるように、こういうことだと、私の粗雑な頭の中ではこう理解したんですが、それでよろしいかどうか教えてください。
政府参考人(大口清一君)
再構築事業を追加した理由という意味でございましたか、昨年五月に成立した委員も御指摘の地域公共交通活性化法で、再生事業制度を導入したわけでありますが、そのときに附帯決議でも委員が御指摘なさったように、是非ともこうしたものについてもやってほしいという附帯決議もございました。
それからまた、その法律の成立を契機としまして、地域の鉄道は最後は地域が支えるんだというような地域における主体的な議論が大変盛り上がってきたこと、それから具体的な支援のプロジェクトの検討が進んで、関係団体、特に日本民営鉄道等協会とか、あるいは第三セクター鉄道等協議会、そうしたところから強い要望もいただいたということも含めまして、問題を整理した結果、現在、交通政策審議会の鉄道部会でいろんな議論をお願いしておりますけれども、そこの緊急提言という形で、地域の暮らしや観光、まちづくりに組み込まれた持続可能な鉄道輸送の実現に向けてという緊急提言を受けまして、経営悪化が深刻化している地方鉄道を幅広く対象にしてほしいと。それから、存廃論議が浮上する前の段階で、国の支援も受けながら、関係者が一体となって活性化を図ろうとするような取組が展開できるような、そういうスキームを追加的に導入すべきじゃないかというような御提言をちょうだいしたところでございます。
そうした状況に対応しまして、私どもとしては、今回この上下分離、公有民営方式による無償貸付けができるような特例、あるいは予算措置等々を総合的に組合せすることができるような、そういう法案として御審議をお願いしたということでございます。
ちなみに、その無償貸付けができるということは、鉄道事業法の許可要件にございます、まさに収支採算性というものが、きちんと見ているんだというところのその収支採算性を自治体が保有する場合は、自治体の責任できちんとその収支採算はやっていくんだというところが担保できれば、そこは事業として自分たちが無償貸付けしてもいいだろうということで、特例としてお認めいただくというスキームにしたわけでございます。
佐藤信秋君
そこのところをもう少しちょっと伺いたいなと。
公共団体が施設を買い取る、そして無償で貸し付ける、そのときに公共団体は二種事業者としての鉄道の経営の方に、そこまでも責任を持ちますと、こういう前提で経営採算は見なくていいと、こういうことなのか、三種事業者としての公共団体が、三種事業としては別に経営採算考えなくてもいいでしょうから、そこのところはどうぞどうぞと、計画どおりで、特に経営採算厳しく見たりはしませんと、こういう意味なのか、そこをお答えください。
政府参考人(大口清一君)
地方自治体が下物を持つ、その限りにおいてはやはり地方自治体の責任はそこにとどまるのだと思いますが、そういうふうにとらえられるんですが、このスキームはあくまでも地元で協議会をつくって、その中で自治体、事業者、それから利用者、それから地元のいろんな篤志家を含めた、NPOを含めた関係者がみんなで議論して、これでいこうというような合力の世界でございますので、その中ではやはり自治体もそこはかとなく上物の運営会社に対してもいろんな意味での支援の、何というんでしょうか、責任というんでしょうか、それがあるのだろうというふうにとらえられるかと思っております。
佐藤信秋君
そこのところは多分これからの議論のところがあるんだろうと思いますが、物の考え方として、物の考え方として役割分担をそういう意味では明確にした方がいいという意見も一方ではあるんだと思います。そして、今までできなかったこととして、公共団体が施設、資産を買い取って、買い取った上に無償で貸付けして、身を軽くして、そしてみんなでできるだけ利用しようと、それだけでも私は十分で立派なことだとは思うんです。
絵にかいたもちにならないようにというのは、実は余りにもそこを、じゃみんなで責任持ちましょうよとやると、実際問題として、どれだけ本当に実行する公共団体なりなんなりが出てくるか。もちろんどんどん頑張っていただかなくちゃいけないんですが、実はこれは買取りの多分価格なんかにも影響するんですね。幾らで買い取るか。買い取って無償で貸付けするわけですね。そうだとすると、幾らで買い取るかというのも多分打合せのいろんな対象にはなって、普通考えますと、今の並行在来線はあれは簿価で買うんでしたっけ。それも答えてください。
そして、収益採算性といいますか収支還元法で、持っていたら二十年で幾ら掛かるかとか、そうだとすると多分そこは赤字になっているというような路線も多いと思うんですね。そうすると、どのぐらいで買い取るかということ自体、お互いに話合いの中で、ここまでやれば何とか、利用者も頑張るから、できるだけ乗るようにするから経営していってくださいね、どこかにそういうラインが出てくる。
今までと違うのは、多分、固定資産税や、それこそ不動産取得税、元々、公共団体が引き取ってくれたら税の方は多分掛からなくなるんじゃないかと思うんですが、そういう効果もあって、なおかつそれは無料じゃなくてある程度支払いますと、身を軽くするから何とか頑張って経営してね、その代わり利用者もみんなで頑張ろうね、こういうふうに理解すればいいのかなと実は思ったものですから、そんなことを聞いているんですが、どうなんでしょう。
政府参考人(大口清一君)
時価か簿価かということにつきましては、実はどちらも事例がございまして、簿価で譲渡されているものもございますし、時価で譲渡されているものもございます。それは、その譲渡譲受をする当事者間のまさに話合い、協議の結果だというふうに受け止めております。
あと、委員お求めになっていた、鉄道事業の再構築事業において上下分離行われる際の譲渡価格の話は今のとおりでございますが、その点だけだったんでしょうかね、ちょっと失礼しました。
佐藤信秋君
ちょっと持って回ったことを伺いました。今、時価か簿価か、そうじゃなくて、そのほかに例えば収益還元みたいなのがあって、二十年、三十年たったらこの資産というのは逆にマイナスがこれだけ積もりますと。
先ほどの羽田先生のお話と少し重複といいますか、問題意識が多分多少一緒のところがあって、簿価で買い取ってくださいね、並行在来線でもですよ、簿価で買い取ってくださいねといったら、これ高いですわね。時価は余りないですわね。収益還元でいったら、多分多くの路線はマイナスですよね。その中のどれに決めるか。どれに決めても、まずは税の方は、固定資産税にしろ不動産取得税にしろ、税の方は公共で持つようになったら掛からないんですねと、これが一つ。今までは掛かるわけでしょう。だけど、所有権移転するようなものですから、言ってみれば。そしてそれは税掛かりませんよね。
次に、譲渡価格としては幅がありますよね。その中でお互いの話合いでしょうけれども、私は収益還元法から簿価まで、その幅の中でお互いに何とかこの経営がうまくいくようにみんなで努力するということを大前提にしながら連携計画を作って決めていくんだろうとは思います。思いますが、過度に公共団体に全部責任持ってよと言っても、そこの部分はどのぐらいの譲渡価格にするか、あるいはこれからの経営にどれだけ期待するかというようなところもあるから、みんなが一緒にどんぶりですといつまでも言っているよりは、ある程度責任分担もはっきりした方がいいかな。
そんな観点から、まずは、公共団体の立場にしてみると、税も減免しました、自分が持つんだから税なんかもういいですと。次に、ある程度、負債を払うためにある程度買い取りますと。どこまでやれば良さそうかというのが、ある程度お互いにいろいろやってみないとなかなかまとまらないかな、話が、ということを絵にかいたもちにならないようにという意味で、その辺どうなっているんでしょうか、こういうことであります。
政府参考人(大口清一君)
大変失礼しました。
まず、再構築事業に取り組むという場合、沿線自治体が、市町村が中心となりまして、それで、公共交通当該事業者、それから公安委員会、あるいはその鉄道等を利用される利用者、そうした方々を構成員にしまして協議会をつくります。この設立された協議会において、様々な協議検討を通じまして、実施しようとする再構築事業の概要を盛り込んだ総合連携計画を作ることになっております。この、何というんでしょうか、総合連携計画を作るというところが大変大事でございます。
その上で、その総合連携計画の中に再構築事業ということでその実施主体である沿線市町村、鉄道事業者、あるいはその他地域の関係者、こうした方々が実施の内容の詳細について突っ込んだ議論をし、協議をし、全員の合意によってそれを盛り込んだ再構築実施計画を作成して実施すると、こういうふうになるわけであります。
その計画の中では、これは自分がやる、これはどこがやるという役割分担もそこはきちんとその計画の中に出てきますから、その中でむやみやたらに野方図にすべてが自治体の責任というような、そういう絵姿にはならないというふうに私どもはとらえております。
佐藤信秋君
これから細目を詰めていくと、こういうことだろうと思いますので、お願い事をしておけば、先ほどのイギリスの例じゃないですが、上下分離、ある程度の責任分担をはっきりした方がいいだろうと。例えば、今回の事例でいえば、上下分離の下の方を持つのは公共団体になるんでしょうから、そうだとすると公共団体と上の方の運営管理する会社、従来の鉄道会社がやるのかもしれませんね、あるいは別の会社が振り替わりでやるのかもしれませんが、そこの役割分担という問題でいえば、中途半端に管理の一部を公共団体持ってくださいねというわけには多分いかぬだろうと。中途半端なことをやったらうまくいかない、そこがです、というのが一つ。
それからもう一つついでに申し上げれば、せっかく公共団体所有と、こういう形にするんだとすれば、災害復旧なんかをやれるように、災害復旧の対象、国庫負担の災害復旧の対象にできるようなこともこれから先考えた方がいいんじゃないかな。その代わり日常のメンテナンスは、これはもう責任分担ですから、鉄道会社の方でちゃんとやってくださいね、その辺はっきりしないとなかなかまとまる話がまとまらないのかなと思って、ちょっと伺っているわけでありますので、その辺はどうでしょう。
政府参考人(大口清一君)
鉄道施設が自然災害によりまして被害を受けた場合、被災規模が大きいということが多々ございます。それで、鉄道事業者の資力によっては復旧が著しく困難な場合になる可能性もある。そうしたときには私どもも、私どもの予算の中で補助を行うこととしておりまして、鉄道軌道整備法に基づく鉄道災害復旧事業費補助、これによりまして支援を行うとともに、私ども省内の道路局あるいは河川等の関係部局とも力を合わせまして、合わせていただいて、公共事業とも連携しながら効率的な復旧を図るということも現実には行っております。
なお、被災した結果として事業の継続が困難となるようなほど経営が厳しくなった場合には、この鉄道事業再構築事業の対象にはなっていくのだろうというふうに考えております。
佐藤信秋君
そこの部分が、ですから、災害復旧の方も、これはいろいろ財政当局とのやり取りもあるんでしょうけれど、従前よりも発動しやすくするということをお考えいただきたい、こういうことなんですね、私がお願いしようとしたのは。
それから、運営管理という面でいえば、ふだんはほとんど公共団体の方は所有はするけれども運営管理は鉄道会社というぐらいに割り切らないと、中途半端になって、片っ方、口だけは出しますとか、片っ方は口出すならお金出してくださいとか、どうしてもなかなかうまくいかない。さっきの絵にかいたもちにならないようにという観点からいけば、そこはかなり割り切っていただいた方がいいだろうと。
そして、税の方は減税するわけですから、しかも譲渡価格どのぐらいにするかはともかくとして、負債もある程度きれいにしていくと。そういう中で、是非、今さっきお話の九十二社の中で八割が赤字であるという状況を少しでも改善していっていただこうとすると、絵にかいたもちにならないように、今申し上げたようなことを、一つ一つはこれからの細目で決めていっていただくんでしょうが、手当てを是非お願いしたいということと、もう一度くどいようですが、並行在来線みたいな議論の中では、価格というのが譲渡価格、あるいは運営管理もどの会社がやるかと、いろいろこれからまた、実は長野、新潟は大変なんですよね。大変なんです。
それから、さっきのお話のしなの鉄道の話も、そうやって都道府県が応援しなければなかなかうまくいかない、こういう状態でありますから、この機会にお願いを申し上げておけば、譲渡価格なるものは、今回のこの再構築事業と同じように、JRと都道府県、公共団体の間も多分その議論はあるんだろうと。整備新幹線のスキームの中で完結しているものではなくて、なくてですね、どのぐらいの価格で譲渡するのかとか、どういう事業体が、経営体が運営しようとするのか、そういう議論の中では、左の端には簿価があり、右の端には多分収益還元で計算されるような価格があって、さてどの辺かという話合いをせないかぬ。それだけの幅の中で是非並行在来線問題も御議論いただきたい。もちろんこのスキームとは別ではあるということではありますが、ということをお願い申し上げたいと思います。
最後に、これで、先ほどは、去年の連携計画が、事業と合わせて百七十三ほど既に調査あるいは事業をやっている。そうすると、同じような意味で、今年度、来年度で大急ぎで多くの連携計画を作っていただければと。地元次第ですよね。だけれども、地元には今申し上げたようなことを分かりやすく説明しておかないと、さて話合いしましょう、どういう話合いするんだろうと。連携計画は作りました、だけれども負担の問題は全然別です、これからですと、こうとかくなりがち。あるいは、そんなに踏み込んでいくと、たくさん負担せないかぬかもしらぬからなかなか手が出ないよねとかいうことがありがちなものですから、その点も含めて、鉄道局長、しっかりと分かりやすく世の中に計画の作り方、ノウハウをお示しするということを最後に一言お願い申し上げたいと思います。
政府参考人(大口清一君)
ただいままで、委員御指摘の点も含めまして、この事例はやはりよくよく分かっていただく必要があるかと思っています。したがって、今の問題も含めまして、よくよくいろんなところのいろんな事例を私どもとしてもいろんなところに提供すると同時に、オープンな議論の中できちんとやっていけるような、そういう、何というんでしょうか、環境づくり、一生懸命やりたいと思っております。
佐藤信秋君
終わります。
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