政府が1日に開いた国土強靱化推進本部の会合で、2026−30年度を対象期間とする国土強靱化実施中期計画の素案が提示されたことを受け、全国建設業協会の今井雅則会長は2日、東京・永田町の自民党本部を訪れ、森山裕幹事長や佐藤信秋国土強靱化推進本部長らに、少なくとも5年25兆円の事業規模確保などを改めて要望した。
素案は、事業規模をおおむね20兆円“強”と明記した。全建によると、要望を受けた佐藤本部長は「事業規模は計画上20兆円強となるが、これが最低限のラインで、実際の予算は毎年度の積み上げで決まる。20兆円を5年で割った額をベースに、毎年度の建設デフレーターの伸びなどを踏まえながら、いかに積み上げて25兆円に近づけるかが大事だ」との見解を示したという。
森山幹事長は、埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、「下水道老朽化などの新たな問題も生じている」と指摘した上で、「20兆円強については財務省の理解を得られた。25兆円に近づけたい。われわれもしっかりと頑張るが、(業界からの)毎年の働き掛けも重要になる」と一丸となった行動を呼び掛けた。
事業費ベースで単純計算すると、毎年度4兆円を土台とし、その上に乗る“強”の高さを巡る攻防が毎年展開されることになる模様だ。森山幹事長は「公共事業、事前防災が重要だが、政権が代わると後戻りしてしまうため、政権を安定させなければならない」とも述べたという。
要望では、資機材価格の高騰や人件費の上昇で公共事業における実質投資額や発注件数が減少し、「地域の守り手」である地域建設業が経営的に非常に厳しい立場に置かれていると窮状を訴え、健全で安定した経営のためには、安定的・持続的な公共事業量の確保や長期的な事業計画の策定が不可欠と主張した。その上で、物価上昇や災害の激甚化・頻発化、老朽インフラの維持管理・更新の重要性を鑑み、国土強靱化基本法に基づく法定計画として、第1次となる今回の国土強靱化実施中期計画について、5年25兆円の事業規模を求めた。
鈴木俊一総務会長も要望を受け、「発災してから要する費用を考えると、事前防災は費用対効果が大きい。放漫財政はだめだが、積極財政で経済成長を進め、財政規律と両立することが必要だ」などと応じたという。
政府は今後、素案のパブリックコメントなどを経て、6月に実施中期計画を策定する方針。