政府は1日に開いた国土強靱化推進本部で、2026−30年度を期間とする国土強靱化実施中期計画の素案を示し、事業規模をおおむね20兆円強程度とすることを確認した。資材価格や人件費の高騰分は予算編成過程で反映する。計画に位置付ける施策のうち、推進が特に必要な116施策の長期目標も明示した。
石破茂首相は「切迫する巨大地震や激甚化・頻発化する大規模自然災害による被害を軽減・回避するためには、インフラ老朽化対策を含め国土強靱化の取り組みのペースを緩めることなく着実に推進していかなければならない」と述べ、6月の計画策定に向けた調整を進めるよう関係閣僚に指示した。
会合では実施中期計画の素案を提示。3月28日の国土強靱化推進会議に示した素案に、事業規模と推進が特に必要な施策の目標数値を加えた。国土強靱化基本計画に掲げる▽防災インフラの整備・管理▽ライフラインの強靱化▽デジタルなど新技術の活用▽官民連携の強化▽地域防災力の強化−−の5本柱に基づき計324施策、このうち推進が特に必要な施策に116施策を定めた。
気候変動に伴う洪水の増加に対応した流下能力を備える国管理河川の整備完了率(23年度時点で31%)を、30年度までに39%、80年度までに100%にする。河川整備計画を見直した国管理河川の割合(同19%)は、30年度までに64%に引き上げ、35年度までに全ての河川で変更する。
災害に強い道路網を確保するため、高規格道路の未整備区間の整備完了率(同6%)を30年度までに19%に高め、84年度までの整備完了を目指す。国や自治体が管理する道路橋梁のうち、緊急措置段階や早期措置段階の修繕完了率(同55%)は、30年度までに80%、51年度までに100%にする。
上下水道の耐災害性を強化し、接続する上下水道管路がともに耐震化されている重要施設(同15%)を30年度までに34%、54年度までに100%に高める。
平時と災害時を区別しないフェーズフリーの環境を整備するため、デジタルを活用した建設現場の省人化を進める。盛土や掘削などの現場工種で自動施工機械の技術基準の適用完了率(24年度時点でゼロ%)について、30年度までに100%を目指す。
建設業の担い手確保に向けて、国や都道府県、市町村の建設キャリアアップシステム活用工事の導入完了率(23年度時点で6.8%)、週休2日工事や交代制工事の導入完了率(同25.1%)のいずれも30年度までに100%にする。
今後、素案に対するパブリックコメントを実施し、6月の閣議決定を目指す。
素案踏まえ関係大臣が閣議後発言
坂井学国土強靱化担当相は同日の閣議後会見で、「素案では今後推進すべき国土強靱化施策と目標、その裏付けとなる事業規模について、所要の積み上げの結果、おおむね20兆円強程度と示している」とした上で、「総理指示を踏まえ関係府省庁と連携し、国土強靱化実施中期計画の策定作業を進めていく」と述べた。
中野洋昌国土交通相は閣議後会見で、「上下水道を含むインフラ老朽化への対応を含め、防災・減災、国土強靱化の取り組みを全力で進めていきたい」と話した。