国土交通省は16日、公共工事や公共施設の維持・管理業務の積算に用いる労務単価や技術者単価、標準賃金を一斉に発表した。公共工事設計労務単価や設計業務委託等技術者単価と同じように多くが5%を超える大幅な伸び率となった。4月1日適用の建築保全業務労務単価は全国・全職種平均で日額1万6612円で、2023年度比6.2%の引き上げ。12年連続の上昇となった。
3カテゴリー・12分類別に全国平均を見ると、保全技師・保全技術員(6分類)は日額2万1417円で、前年度比3.4%上昇。清掃員(3分類)は日額1万3983円で、前年度比9.8%上昇。警備員(3分類)は日額1万4437円で、前年度比8.2%上昇となった。
建築保全業務労務単価は、各省庁の施設管理者が「建築保全業務標準仕様書」を適用して保全業務を委託する際、業務委託費のうち直接人件費を積算するための参考単価となる。全国10地区に分けて設定し、国交省が公表・通知。官房官庁営繕部が毎年度実施している労務費調査に基づき、直近の賃金実態を適切に反映している。日割り基礎単価に乗じて時間当たりの「割増基礎単価」を出すのに用いる割合(割増基礎単価率)は、▽保全技師T=9.5%▽同U=9.8%▽同V=9.5%▽保全技師補=9.2%▽保全技術員=9.9%▽保全技術員補=10.3%▽清掃員A=10.1%▽同B=10.9%▽同C=11.1%▽警備員A=9.6%▽同B=9.4%▽同C=10.6%。
全国一律の宿直単価は4700円(前年度4300円)。設定された単価に宿泊の回数を乗じることで宿直手当を算定する。
電気通信5.4%引き上げ
3月1日から適用する電気通信関係技術者等単価の全5職種の単純平均は前年度より5.4%上がって日額3万0800円となった。単価上昇は13年連続。
国土交通省が発注する電気通信設備工事と電気通信施設保守業務などの積算に用いるため全国一律で単価を設定している。カテゴリー別に電気通信技術者など2職種の平均は日額3万0350円で、前年度比5.2%上昇。点検技術者など3職種の平均は日額3万1100円で、前年度比5.5%上昇となった。
職種別の基準日額は、電気通信技術者が3万6300円(割増対象賃金比64%)、電気通信技術員が2万4400円(64%)、点検技術者が3万6700円(64%)、点検技術員が2万8300円(54%%)、運転監視技術員が2万8300円(64%)となった。
機械設備工5.6%アップ
3月1日から適用する機械設備工事積算に関する標準賃金は、全2職種の単純平均が前年度より5.6%上がって日額2万9100円となった。単価上昇は12年連続。
国土交通省が発注する機械設備工事などの積算に用いる。職種別の標準賃金は、機械設備製作工が日額2万9900円(割増対象賃金比は未設定)、機械設備据付エが日額2万8300円(0.669%)となる。
鋼橋製作工2.8%上がる
国土交通省が発注する鋼橋や横断歩道橋製作費の積算に用いる鋼橋積算基準の直接労務単価(鋼橋製作工)は、前年度より2.8%上がって日額2万9500円となった。3月1日から適用する。単価上昇は3年連続。2015年度単価と比べると12.6%上昇となる。
業界首脳コメント
前年度比で5%台後半を超える公共工事設計労務単価や設計業務委託等技術者単価などの引き上げに関し、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設コンサルタンツ協会の首脳が16日にコメントを発表した。
適切な労務費支払い推進
日建連・宮本洋一会長
国土交通省において、昨年に引き続く大幅な公共エ事設計労務単価の引き上げを決定し、12年連続での引き上げを行っていただいたことに、深く感謝の意を表します。
今回の引き上げは、最近の労働市場の実勢価格の適切・迅速な反映と、「構造的賃上げ」を重点分野にテフレ完全脱却を進め、日本経済再生を目指す岸田内閣の姿勢を踏まえたものと考えます。
我々は、この引き上げを、技能者の更なる賃金引き上げにつなげていかなければなりません。
日建連としても、引き続き「労務費見積り尊重宣言」に基づき、適切な労務賃金の支払いを進めるなど、技能者の賃金引き上げにつながる努力を続けてまいります。
併せて、公共工事の円滑な施工に万全を期し、防災・減災、国土強靱化の着実な推進に貢献するためにも、時間外労働の削減、建設キャリアアップシステム(CCUS)の更なる普及促進、DXなど技術開発の推進・新技術の活用など、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の実現に努めてまいる所存です。
処遇改善し使命果たす
全建・奥村太加典会長
2013年度以降12年連続となる公共工事設計労務単価の引き上げが決定しました。前年度比5.9%の大幅な引き上げであり、ご尽力いただいた国土交通省をはじめとする関係各位に深く感謝申し上げます。
建設技能者の処遇改善は、地域建設業が担い手を確保し、「地域の守り手」として社会的使命を果たしていくための重要課題の一つであります。
全建としましては、引き続き地域建設業のさらなる発展に向けて積極的な取り組みを展開してまいります。
会員一丸で環境改善ヘ
全中建・土志田領司会長
公共工事設計労務単価が12年連続で引き上げられました。国土交通省をはじめ政府及び与党の関係各位に心から感謝申し上げます。
労務単価の引き上げは建設技能者の処遇改善や若者の担い手確保に直結します。引き上げが継続されることにより、中小建設業界も少しずつではありますが、経営環境が改善されつつあります。
中小建設業界で働く多くの人々が生きがいとやりがいのある業界を目指すとともに、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)およびワーク・ライフ・バランスス(WLB)を重視した働き方改革を進め、若者から選ばれる業界となるよう、適正な労務賃金の支払い、労働環境の改善に努め、当協会として会員団体及び傘下企業が一丸となって通り組んでまいります。
十分な業務体制構築ヘ
建コン協・中村哲己会長
2024年度設計業務委託等技術者単価において、技術者単価の引き上げ決定がなされたことに対しまして、この間の政府ならびに与党の皆さまのご尽力に感謝申し上げます。
建設コンサルタント業界は、業務(調査・設計等)の実施体制を十分に整えて強靱で豊かな国土形成に向けた災害対策や老朽化対策、耐震化対策等の業務遂行に、全力を尽くしてまいります。
また、24年度以降も当初予算に必要な事業費を適切に組み込んでいただき、必要な事業が計画的かつ着実に推進できるようお願い申し上げます。