2023/2/15(水)
新聞記事
令和5年2月15日 建設通信新聞
建設通信新聞

新たな公共工事設計労務単価
全職種平均5.2%引上げ
物価上昇率上回る伸び

国土交通省は14日、2023年度の公共工事設計労務単価を発表した。全国・全職種の単純平均値は前年度に比べて5.2%の伸びで、足元の物価上昇率を上回った。11年連続の上昇。伸び率が5%以上になるのは9年ぶり。全国・全職種の加重平均値では金額が2万2227円に上り、労務単価の公表を始めた1997年度以降で最高値を更新した。直轄工事は例年と同様に3月から適用する。

設計業務委託等技術者単価、建築保全業務労務単価、機械設備工事積算に関する標準賃金、電気通信関係技術者等単価と合わせて発表した。

公共工事の工事費積算に使用する公共工事設計労務単価は、毎年度実施する公共事業労務費調査の結果をベースに算出し、都道府県ごとに職種別で設定している。全51職種のうち、調査で十分な有効標本数を確保できなかった建築ブロック工は労務単価を定めていない。

今回は新たに建設キャリアアップシステムの能力評価を反映した手当など、元請け企業が下請け企業の技能者に対して直接支給している手当を盛り込んだ。必要な法定福利費相当額、年間5日の年次有給休暇取得義務化に要する費用、時間外労働時間の短縮に必要な費用は引き続き反映している。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて前年度を下回った単価を据え置く特別措置の適用と、東日本大震災の被災地で入札不調の発生状況に応じた単価の採用は、取りやめた。

全職種平均の伸び率は、斉藤鉄夫国土交通相と建設業4団体のトップが22年2月の意見交換会で「おおむね3%の技能者の賃上げを目指す」とした申し合わせの水準より高い。物価変動の指標の一つである消費者物価指数は22年12月の伸び率が前年同月比4.0%で、これも上回った。岸田文雄首相は物価上昇率を超える賃上げを経済界に求めている。全職種の平均金額が最高値を更新するのは5年連続。

主要12職種に限ると、平均の伸び率は5.0%、平均金額は2万0822円だった。特殊作業員が4.0%、普通作業員が5.7%、軽作業員が6.3%、とび工が4.8%、鉄筋工が3.6%、運転手(特殊)が5.7%、運転手(一般)が5.8%、型枠工が3.8%、大工が4.9%、左官が4.0%、交通誘導警備員Aが7.1%、交通誘導警備員Bが6.3%と、総じて高い伸び率になっている。

新単価は3月1日以降に契約する工事に適用する。予定価格の積算に旧単価を適用して3月1日以降に契約を結ぶ工事は契約変更によって新単価に入れ替えるなどの特例措置を講じる。22年度補正予算など公共事業の円滑な執行のため、通常4月の改定時期を今回も3月に前倒した。

斉藤国交相は14日の閣議後会見で、「最近の物価上昇率を上回る大幅な引き上げになった」と強調し、「政府の最重要課題として、社会全体の賃上げに向けた取り組みが進められている。建設業についても、設計労務単価などの引き上げが技能労働者らの賃金水準上昇につながる好循環を持続できるよう、引き続き官民一体となった取り組みの一層の推進に努めていきたい」と力を込めた。

引き上げの要因については、官民一体で賃上げの機運を醸成してきたことに加え、安定的な公共事業予算の確保、適正価格での公共工事発注とダンピング(過度な安値受注)対策、適正な請負代金での下請契約の 締結促進など、これまで進めてきた取り組みが複合的に結び付いたことによる成果との認識を示した。