自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」は8日、東京都千代田区の参議院議員会館で総会を開いた。根本匠会長(衆院議員)は、国土交通省が検討中の新たな公共工事設計労務単価について、担い手確保の観点から引き上げが不可欠で、さらに今回は政府を挙げて取り組む賃上げや働き方改革への対応という政策的視点を反映する必要があると主張した。出席した他の国会議員も賛同した。
根本会長は「長期的に担い手を確保する観点から労務単価の引き上げは不可欠」と指摘。加えて、岸田文雄首相が物価上昇率を超える賃上げを産業界に求めていることや、建設業への適用が1年後に迫る時間外労働の罰則付き上限規制を踏まえた週休2日確保と働き方改革が急務であることを挙げ、「政策的視点を入れた労務単価であらねばならない」と強調した。
政府側から総会に出席した長橋和久国土交通省不動産・建設経済局長は、新たな労務単価について「適切な費用を反映するということで作業中」と述べるにとどめた。国交省は新たな労務単価を近く公表する見通し。引き上げになれば11年連続の上昇となる。
賃上げ表明企業を政府調達の総合評価方式で加点する措置にも議論が及んだ。ある国会議員は、目標値(大企業3%、中小企業等1.5%)を大きく上回る賃上げを表明した企業に対しては加点を大きくするなど、賃上げのさらなる促進に向けた対応が必要と訴えた。佐藤寿延国交省官房技術審議官は「実績を確認する中で、どの程度賃上げしたかが明らかになってくる。企業の動向を見ながら、制度を直すところがあれば見直していきたい」と答えた。
賃上げの原資を確保する価格転嫁への意見も目立った。直轄工事で単品スライドとインフレスライドを適用する際に受注者が1%を負担するとした「1%条項」の廃止を求める声に対し、佐藤技術審議官は「増額スライドだけでなく、物価が下がれば減額スライドを行う。両方をにらみながら、どの辺りが良いのかという問題意識を持って考えたい」と述べた。
議連の佐藤信秋幹事長(参院議員)は「単品スライドは品目ごとに1%を超えなければ適用対象にならない」とし、複数品目の資材価格が高騰する現状の物価上昇局面ではインフレスライドが適していると改めて指摘した。
公共工事だけでなく、民間工事でも適切な価格転嫁を実現する必要があるとして、契約の在り方などを議論する国交省の「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」に期待する声も上がった。