2022/3/1(火)
新聞記事
令和4年2月28日 建設通信新聞
建設通信新聞

【ニュース断面/ 建設産業成長へ「4本の矢」】
最後の関門「一般管理費」も改善
労務単価・積算改定・低入基準・賃上げ加点

建設産業界の働き方改革や担い手確保育成、生産性向上をさらに強く後押しする4つの政策が2022年度から始まる。4つの政策には地方建設企業が実現へ大きな関門と見ていた「低入札価格調査基準算定式」で行政から難色を示され続けてきた「一般管理費×0.55」の引き上げも含まれた。建設産業が成長するための好循環の期待を背負った、成長戦略3本の矢ならぬ「4本の矢」を建設業界はどう考えれば良いのか。

24日に開いた自民党の公共工事品質確保に関する議員連盟総会の席上、議連の根元匠会長は満足げにこう切り出した。「働き方改革への対応として労務単価、さらに発注単価も一般管理費率引き上げで上がる。また低入基準見直しに加え、賃上げ運用も見直した」

「建設業の特性が考慮されていない」として猛反発が全国各地で起きた、政府調達の総合評価での賃上げの加点枠組みも8日、中小建設業の特性を踏まえた弾力的な運用枠組みを公表された。その後、10年連続の上昇となった公共工事設計労務単価、一般管理費率見直しなどを盛り込んだ積算基準改定と低入調査算定式のうち「一般管理費」部分の見直しまで、「政策的判断に基づく政策」(根本品確議連会長)は矢継ぎ早に打ち出された。

このうち、10年連続アップの「労務単価」と「一般管理費率アップ」は、建設現場の働き方改革と賃上げ実現への支援と原資となる。元請け社員の給与は工事原価とは別項目の一般管理費等に含まれるため、特に中小規模工事の場合、一般管理費等部分が官積算で増えなければ、総合評価で加点を受けるための賃上げも難しいからだ。

また一般管理費率アップ以外の積算基準改定として、小規模工事向けICT積算なども盛り込まれるなど、地方自治体工事を主戦場とする中小企業にも配慮した見直しとなった。一般管理費率は2015年、20年ぶりに引き上げられ、当時、現場管理費率も見直したことで低入基準価格も実質上昇していた。今回はさらに賃上げ支援という政策的判断で一般管理費率を見直した。

一方、これまで自治体発注工事で多発するダンピング(過度な安値受注)に伴う経営悪化の抑止に向けて中小建設企業が強く求めてきた、低入基準計算式で大きな関門だった「一般管理費×0.55」の見直しも実現した。

これまで競争激化と収益低下に直面していた中小建設企業はダンピング対策として低入調査の範囲引き上げと計算式見直しを求め続けてきた。その中で、この10年間国交省が否定し続けたのが一般管理費0.55の引き上げだった。「一般管理費は役員報酬や本社・支店社員給料など。現場の処遇改善や技能労働者など担い手確保の話とは違いますよね」

今回、政府の賃上げ支援の流れの中で、これまで大きな関門だった一般管理費の低入基準計算式見直しや労務単価アップ、積算基準改定など相次ぐ大きな変更の先をどう見るのか。

国交省だけでなく財務省とも交渉する品確議連の佐藤信秋幹事長は、「賃上げ加点と今回の低入基準計算式見直しなどは分けて考えてほしい」と前置きした上で、「賃上げ加点については、本当に間口を広げて業界が分断しないように、また賃上げが自治体に拡大することも想定した次への備えが必要だ」と指摘する。

その上で、「当面の目標は建設業男性生産労働者の賃金を、全産業男性労働者平均までにすること。そのためには労務単価も2万5000円まで引き上げなければならない。その先には標準的な積算価格である予定価格を超えた金額でも受注できるような積算と予算の新たな関係を構築することが必要だ」と見通す。

低入札価格調査基準見直しの変遷(黒枠が見直し部分)

低入札価格調査基準見直しの変遷