国土交通省の2021年度予算案は、一般会計が5兆8981億円となった。臨時・特別の措置を含む20年度の当初予算額(6兆7363億円)と比べると8382億円の減少。20年度第3次補正予算を加えた「15カ月」予算額では9兆1893億円となる。「流域治水」を始めとするハード・ソフトが一体となった防災・減災対策や個別施設計画に基づくインフラ老朽化対策、生産性向上・成長力強化につながるインフラ整備などを柱とする。
内訳は一般公共事業費が5兆2027億円、災害復旧などが560億円。非公共事業では行政経費に5988億円、その他施設費に406億円を充てる。一般会計外では、高速道路の暫定2車線区間の4車線化などに財政投融資2兆0087億円を活用する。
主な内容をみると、気候変動による水災害リスクの増大に備えるための「流域治水」の考え方に基づき、堤防整備、ダム建設・再開発などの対策を加速するため、4968億円を計上した。土砂災害防止施設の重点整備など総合的な土砂災害対策の推進費1003億円とあわせて、ハード・ソフト一体となった総合的な対策を進める。
自治体の流域治水の取り組みを支援するため、防災・安全交付金を増額し、8540億円を措置する。そのうち、3000億円程度を流域治水関連施策に優先的に配分する。
災害時でも輸送ルートが確保されるよう、道路の防災・減災対策も強化する。高規格道路のミッシングリンク解消や4車線化、直轄国道とのダブルネットワーク化などに4315億円を充てる。
インフラ老朽化対策は7073億円を計上した。事前防災と両輪となる予防保全への本格的な転換を進めることで、将来にわたって必要なインフラ機能を維持しながら、維持管理・更新費用を縮減する。
経済成長の観点からは、三大都市圏の環状道路整備など効率的な物流ネットワークの強化に4190億円を充てる。物流だけでなく、都市機能(130億円)や航空ネットワーク(125億円) 、鉄道ネットワーク(191億円)、国際コンテナ戦略港湾(523億円)などストック効果を重視した計画的なインフラ整備を推進する。
社会資本整備総合交付金は6312億円で、民間投資・需要を喚起する道路竪備やPPP/PFIを活用した下水道事業、基幹産業の国内回滞・サプライチェーンの強靱化を目的とした港湾の機能向上などの自治体の取り組みを総合的に支援する。
建設業の生産性向上の観点からは、直轄土木工事の年間総件数の15%程度を占める大規模設計で3次元デジタル活用を原則化する。
適正な工期の確保に向け、国庫債務負担行為の活用を拡大し、2カ年国債は4305億円(2370億円増)、ゼロ国債は1785億円(462億円増)をそれぞれ設定する。