国交省 1.5兆円の財政投融資実施
国土交通省は政府が8日に閣議決定した経済対策の実現に向け、1兆5341億円の財政投融資の実施を予定している。内訳は2020年度第3次補正予算8141億円、21年度当初予算要求額7200億円。国土強靱化の実現に向けた高速道路の4車線化事業に1兆円、空港機能の強化に2000億円を計上した。
現下の低金利状況を生かし、防災・減災、国土強靱化に向けた高速道路ネットワークの強化や地方都市での防災街づくりなどを推進する。
高速道路の安全性と信頼性を引き上げるため、暫定2車線区間の4車線化事業を加速する。日本高速道路保有・債務返済機構に1兆円を財政投融資することで、機構は5000億円程度の金利負担が軽減される。その5000億円を事業費に充ててもらう。
都市再生の取り組みでは地方都市の防災機能の強化や新しい働き方に配慮した街づくりを後押しする。
新型コロナ後の人の往来再開やインバウンド(訪日外国人旅行者)の30年6000万人という目標達成に向け、空港インフラの整備にも力を入れる。25年の国際博覧会(大阪・関西万博)に向け、老朽化した関西国際空港第1ターミナルをリノベーションする。 国内線エリアの移転により、分断されていた国際線エリアを一体化し面積を60%拡大する。国際線の年間取り扱い能力を1200万入から3000万人に増やすほか、保安検査場の処理能力も1時間当たり4500人から6000人とする計画だ。▽羽田▽新千歳▽福岡▽那覇−の4空港で滑走路の増設やターミナルエリアの機能強化などに取り組む。
経済対策に基づく財政投融資の概要は次の通り。
▽対象機関=@内容A20年度第8次補正予算B21年度当初予算要求額。
▽住宅金融支援機構=@住宅金融機構グリーンボンドヘの政府保証B2200億円▽都市再生機構=@都市再生の促進A581億円▽日本高速道路保有・債務返済機構=@国土強靱化に資する道路ネットワーク機能の強化、(暫定2車線区間の4車線化)A5000億円B5000億円▽自動車安全特別会計(空港整備勘定)=@空港機能強化などA540億円▽新関西国際空港会社=@関西国際空港ターミナルリノベーション事業A2000億円▽民間都市開発推進機構=@民間都市開発事業への金融支援A20億円。
国交省関係 主な事業と計上額
政府が15日に決定した2020年度第8次補正予算案のうち、国土交通省分は事業費ベースで4兆1779億円、国費ベースで8兆2912億円を計上した。国費のうち公共事業費が1兆9842億円、非公共事業費は1兆3569億円。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(21〜25年度)に1兆3684億円(非公共事業含む)を充てる。
国土交通省関係の主な事業と計上額(公共事業)は次の通り。
【防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保】
▽気候変動を見据えた府省庁・官民連携による「流域治水」等の推進=4261億77百万円、非公共事業7億83百万円
▽南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等を見据えた住宅・建築物の耐震化、津波対策=非公共事業6億20百万円
▽官庁施設や国営公園等の災害性強化=39億45百万円、非公共事業36億17百万円
▽災害時情報伝達手段の多重化・高度化=67億18百万円
▽災害に強い国土幹線道路ネットワークの機能強化対策=2058億16百万円、財政投融資5000億円
▽道路インフラの局所的な防災・減災対策=774億54百万円
▽陸海空ネットワークの耐災害性強化=716億45百万円、非公共事業68百万円、財政投融資142億円
▽河川・ダム、道路、鉄道、港湾等の重要インフラの老朽化対策=1294億53百万円
▽3Dモデルやカメラ画像等を活用したインフラの整備、管理などデジタル化の推進=129億32百万円、非公共事業2億20百万円
▽安定かつ迅速な地殻変動監視のための電子基準点等の強化=非公共事業5億9百万円
▽線状降水帯、台風等による大雨等の予測精度向上等の防災気象情報の高度化対策=非公共事業59億71百円
▽地域における防災・減災、国土強靱化の推進(防災・安全交付金)=4925億8百万円
▽公営住宅の災害復旧=7億81百万円
▽河川、道路、鉄道等のインフラの災害復旧事業等=3959億48百万円、非公共事業61百万円
▽地域公共交通や鉄道駅等のバリアフリー化等の促進=65億69百万円、非公共事業4億51百万円
【ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現】
▽国土交通行政手続きのオンライン化等の推進=非公共事業10億85百万円
▽スマートシティーの推進によるまちづくりのデジタル化やスマートシティーの海外展開の推進=非公共事業10億85百万円
▽インフラ、交通、海事・港湾分野等のデジタトランスフォーメーションの推進等=16億69百万円、非公共事業37億89百万円
▽海事、港湾分野等のカーボンニュートラルの推進=8億円、非公共事業21億67百万円
▽脱炭素社会実現に向けた省エネルギー性能の高い木造住宅等の普及促進=10億円
▽グリーン住宅ポイント制度=非公共事業1094億円
▽グリーン社会の実現に向けた下水道資源の有効利用等の推進=50億円
▽サプライチェーンの強靱化や物流の生産性向上につながる道路ネットワークや港湾の整備等の推進等=522億54百万円、非公共事業2億円
▽空港機能強化の推進=財政投融資2540憶円
▽経済成長の基盤となる都市インフラの整備=89億56百万円
▽都市公園等による地域活性化=25億28百万円
▽都市再生、民間都市開発投資の促進=財政投融資601億円
▽産業の活性化、雇用の創出等につながる港湾整備等=48億20百万円、非公共事業30百万円
▽地方での地域・社会・雇用の民需主導の好循環の実現(社会資本整備総合交付金等)=190億93百万円。
農水省 強靭化対策など推進
政府の2020年度第8次補正予算案で、農林水産雀は公共事業関係費に4549億円を計上した。11日に決定した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(21〜25年度)関連予算として計3658億円を確保。農業水利施設の洪水調節機能強化への支援やため池の防災性能増強などに1155億円を充てる。20年7月豪雨被災地の復旧・復興事業に1449億円を投じる。
防災・減災、国土強靱化対策では、農業用ダムの洪水調節機能の強化や農村地域の排水性能の向上を目指し、農業水利施設の整備やメンテナンスを実施・支援する。豪雨時に貯水機能を発揮する「田んぼダム」の碓保に取り組む地域の農地整備を後押しする。決壊すると下流域への影響が大きく、早急な対応が必要な「防災重点農業用ため池」で劣化状況の評価や地震・豪雨耐性評価、統廃合を含む防災工事を支援する。
治山施設の整備による流木や土石流の抑制対策などに461億円を充当。重要インフラ施設周辺などでの森林整備に388億円、漁業地域での岸壁の耐震化対策や防波堤の耐浪化対策の支援に230億円を配分した。7億円を投じ、南海トラフ巨大地震など大規模地震・津波の発生が想定される地域の津波・高潮対策などを展開する。堤防のかさ上げや補強、老朽化した海岸保全施設の改修などに取り組む。