国土交通省が7日に公表レた20年度から適用する改定版「土木工事・業務の積算基準」は、働き方改革やi-Constructionの更なる推進に取り組むための対応ばかりではない。公共工事の改正品確法などを踏まえた対応も具体化している。20年度からは労災補償で、法定の保険契約だけでなく、任意の保険契約も必須になることから、任意の保険料を反映するための現場管理費率を改定する。このほかにも、天候などによって工期を延期しなければならない場合、工事一時中のの算定式を使って増加費用等を積算することや、フルハーネス型対応した積算を行っことも盛り込んだ。
昨年6月に成立・施行された公共工事の改正品確は、労災補償に必要な保険契約の保険料等を予定価格にきちんと反映することが規定された。現在、国交省直轄事業では予定価格を積算する際、労災補償については、必ず受注者が加入しなければならない法定のものを現場管理費の費目に設定して、その保険料を100%含まれる形で予定価格に反映している。
一方、法定の保険に上乗せされる保険会社が開発した任意の保険については現在、3割程度しか国交省直轄事業では受注者が加入していないのが現状だ。今回の法改正の趣旨を踏まえ、20年度から国交省直轄患業では労災補償で、この任意の保険とも必ず契約しなければならないことにした。
このため今回の積算基準の改定で、全工種区分の現場管理費を改定。労災補償で任意の保険の分も加味するため、現現管理費率の算定式を改定し、引き上げた。直接工事費約2億円の工事では、現場管理費率が約0.1%増え、約30万円分が増える計算となる。併せて、労災補償に必要な保険契約の付与を、入札説明書で要件化することにした。
今回の積算基準改定では、工期と連動した間接工事の設定もポイントの1つだ。工期が延びてしまうと、現場の諸経費が増えてしまう一方、天候など受注者に責任が無いケースで工期が延びてしまった場合、増加費用等を積算する専用の基準が現在はない。
こうしたケースに対応するため、工事一時中止に伴う増加費用等の積算基準の算定式を、受注者に責任が無いケースで工期延期となった場合にも適用する。施工実態に合うよう、算定式の係数を見直すとともに、この基準を適切に運用できるよう、天候要因による休日日数を発注時に条件明示することにした。
これにより、例えば、純工事費約2億円の河川工事で、約20日間の工期延期となった場合、従来の一時中止の算定式では約146万円を負担する計算となる。今回、算定式の係数見直しにより、その産出額は約150万円となり、約4万円分が増えることとなる。
フルハーネス型の墜落制止器具の使用が19年2月から原則化されたことにも、国交省は積算面で対応する。22年1月1日までは、通常の安全帯が使用できる猶予期間となっているため、それまでの間、フルハーネスを購入した場合は費用を実績変更する形をとる。
22年1月2日には、フルハーネスの原則化に完全移行することから、国交省は共通仮設費に率計上してその費用を含んだ予定価格を積算できるようにするため、20年度に諸経費動向調査を行う。