2018/12/21(金)
新聞記事
平成30年12月21日 建設通信新聞

自民・品確議連「品確法改正PT」始動
地域単位の平準化 発注者責務に明記

公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の改正へ、その取り組みが本格的なスタートを切った。自民党・公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連)の『品確法改正プロジェクトチーム』(座長・佐藤信秋参院議員)は20日、緊急対応の強化や市町村における平準化の推進を柱とする「骨子案」を提示。これをベースに成案化に向けた詰めの作業に入る。

ベースとなる「骨子案」は、全国で相次ぐ大規模な自然災害からの迅速かつ円滑な復旧・復興を目的とする「緊急対応の強化」と、長時間労働の是正や従事者の処遇の改善といった「働き方改革の推進」が大きな柱となる。

例えば、2014年の担い手3法の制定(前回の改正)によって明確化された適正な予定価格の設定やダンピング(過度な安値受注)の防止、計画的な発注、適切な工期設定・設計変更といった『発注者の責務』に、災害対応の緊急性に応じた随意契約、指名競争入札の適切な選択や、復旧工事の実施体制の確保を目的とした建設業団体との災害協定の締結を位置付ける。

従事者の働き方改革を支える適正な請負代金、適正な工期での契約や、施工時期の平準化も重視する。

特に「適正な請負代金および適正な工期による請負契約の締結」を基本理念に明記。債務負担行為や繰越明許費の活用による年度をまたぐ柔軟な工期設定や、中長期的な発注見通しの統合・公表など、市町村などが地域単位で行う平準他の推進を発注者の責務として入れ込んでいく。

下請契約を締結する場合の受注者の責務も新たに規定。「必要な労務費・社会保険料等を含む適正な請負代金での下請契約の締結」や「適正な工期での下請契約の締結」を受注者の責務に書き込む。

建設業あるいは公共工事の持続性を確保する生産性の向上に関する規定も明記。発注者に監督・検査における画像や電子的情報を活用した効率化を求める一方、受注者の責務としてICTの活用による施工段階での積極的な取り組みを求めていく。

建設生産・管理システムの上流に位置する測量・地質調査、設計も改めて品確法に明記。発注者の責務として、調査等における適正な利潤を確保するための適正な予定価格の設定、ダンピング受注の防止、適切な設計変更、適正な工期設定、施工時期の平準化、災害など緊急対応の推進や円滑な発注体制の構築を位置付ける方針だ。


新3K建設産業へ 品確法改正で後押し

自民党・公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連)の『品確法改正プロジェクトチーム』の座長を務める佐藤信秋参院議員は、迅速な災害対応を可能とするための「緊急対応の強化」や、市町村など自治体における平準化といった「働き方改革の推進」を柱とする法改正の狙いを「すべては新3K(給与が良い・休日が取れる・希望が持てる)の建設産業のため」と説く。

特に「大規模な自然災害が発生した場合は、危機管理産業であり、地域の守り手でもある建設産業の力を借りなくてはいけない。その建設産業が持続的に活躍できるフィールドを品確法の改正の中で作り上げていきたい」と意気込む。

例えば、建設企業からの要望も多い平準化の推進は「単年度主義の原則という中で、自治体が債務負担行為や繰り越し手続きといったツールをうまく活用できていないケースもある。効果的に活用すベし、ということを法律に位置付けることで、自治体の取り組みを後押することができる」とみる。

従事者の処遇を支える働き方改革の推進は「それぞれの企業の経営基盤の安定があってこそ。だからこそ、新3Kの職場づくりのためには、建設産業の持続的な発展がなければならない」と見通す。


公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案
(骨子案)のポイント
■災害時の緊急対応

→災害時における復旧工事の迅速かつ円滑な実施、そのための地域における担い手の確保を基本理念に明記

《発注者の責務として・・・》
  • 災害時においては、手続きの透明性および公平性の確保に留意しつつ、緊急性に応じて適切に随意契約、指名競争入札などの入札・契約方法を選択
  • 災害時における復旧工事等の実施体制の確保に関する建設業者団体等との協定の締結や他の発注者との連携
■働き方改革への対応

→品質確保に震要な役割を果たす従事者の賃金、労働時間、休日その他労働条件の適正な確保を目的に、適正な務負代金および適正な工期による請負契約の締結を基本理念に明記

《発注者の責務として・・・》
  • 休日、準備・後片付け期間、気象条件、許認可の事務手続きに要する期間等を考慮した適正な工期設定
  • 債務負担行為や繰越明許費の活用による翌年度にわたる工期の設定や、中長期的な発注見通しの統合・公表
《受注書の責務として・・・》
  • 必要な労務費・社会保険料等を含む適正な請負代金での下請契約
  • 適正な工期での下請契約
■生産性の向上への取り組み

→公共工事の調査、設計、施工および維持管理の各段階で、発注者・受注者の連携を通じて、生産性の向上が図られるように配慮することを基本理念に明記

《発注者の責務として・・・》
  • 監督・検査における画像・電子的情報等の活用
《受注者の責務として・・・》
  • ICTの活用等による施工段階の生産性向上
■調査・設計の品質確保

→調査等(測量、地質調査、点検・診断などのその他調査、設計)の品質が公共工事の品質確保に重要な役割を果たすことから、調査等を法律の対象に位置付け

《発注者の責務として・・・》
  • 調査等でも適正な利潤を確保するための予定価格の適正な設定、ダンピング受注の防止、適切な設計変更、施工時期の平準化、災害時の緊急対応の推進や円滑な発注体制の構築
■その他
《発注者の責務として・・・》
  • 発注関係事務の実施に必要な知識または技術を有する職員の育成・確保の体制を構築
  • 国および都道府県は発注者を支援するため、契約により発注者の補助を行う者の能カの活用など必要な措置を実施
  • 工事に必要な情報(地盤情報)の適切な把握・活用を基本理念に追加
  • 公共工事の完成後、施設の管理を行う場合、その品質を将来にわたって確保するため、適切に点検、診断、維持、修繕その他維持管理を実施