地球温暖化・気候変動対策や、東日本大震災・福島原発事故からの復旧・復興など、わが国における環境課題は山積している。建設業と同様、担い手不足解消も避けて通れない問題で、国全体での取り組みが求めるれている。自民党政務調査会環境部会長の佐藤信秋参議院議員に話を聞いた。
IPCC第5次評価報告書によると、今世紀末までに世界平均気温が0.3〜4.8度、平均海面水位は最大で0.82メートル上昇すると予測されています。こうした気候変動をどう考えますか。
日本として、二酸抱炭素(C02)やフロンなどの温室効果ガスをどれだけ削減するか、努力しなければならないのは当然の話です。そうはいっても、ある程度は温暖化が続き、海面が上昇するといわれているので、国土の保全や、生活・生命の安全・安心の対策の面から、適応計画と呼ばれる計画をつくって実行していくのが大事です。計画の策定にあたっては、なるべく多くの人の意見を聞くべきだと思います。温暖化すれば、海面の上昇や、気象・気候は荒っぽくなり、雨量も変動します。日本全体の年間の平均降水量は100年前に比べると、約1600ミリから約1500ミリへと100ミリくらい減りました。全体の降水量は減りましたが、降る・降らないのばらつきが従来の2倍になっています。これまでプラスマイナス200ミリくらいだったのが400ミリくらいになったわけで、その分、集中豪雨が起きやすくなりました。集中豪雨の備えを強化する必要があると思い。また、C02削減は日本一国だけでなく世界中の問題でもあります。環境技術に優れたわが国が、温暖化対策のリーダーシップをとるべきです。やるべきことを着実に実行するのが大事で、言葉でいうだけでは何も進みません。
東京電力福島第1原子力発電所事故によって、福島県では東日本大震災からの復興が遅れ気味といわれています。復興の前提となる除染作業と、除染除去物・土壌を収容する中間貯蔵施設について、現時点の進ちょくをどう評価しますか。
日本の土木技術は大変優れたものがあるので、除染作業や中間貯蔵施設の建設でも十分活用すべきです。中間貯蔵施設に除染除去物・土壌を搬入すればいいという単純なものではなく、周辺住民の納得・協力をいただくことが大事です。合わせて、撒入にあたっての交通の処理や切り回しなど、施設建設の技術以外のソフト部分についても住民の理解をいただかなりればなりません。建設業の方々はそうした住民説明などに関する経験を豊富に積んでいるので、その経験を生かして住民説明を円滑に進めていただきたいと思います。物理的にただ運べばいいというものでもないので、公的機関、実際に仕事する人たち、住民の皆さんとがコラボレートして進めていくことが円滑な処理につながると思います。
除染作業は現在までに、総推計量2200万トンのうち800万トンが終了しています。今後も、関係者の理解を得ながら進めるのは大事なことで、一つ一つステップを着実にかつ迅速に進めなければなりません。中間貯蔵施置は建設場所を選ぶだけでも時間がかかりました。これからさらに広い範囲の皆さまの理解と、仮置き場の住民の方々の理解を得なければなりませんので、一層の努力が必要です。遅れているという批判はありますが、関係者は一生懸命にやっているので、これから円滑に進めることが大切です。
人口減少、高齢化を背景に、里地里山が森林などの環境保全の担い手不足が課題になっています。
森林は温暖化対策の吸収源にもなるので、しっかりとした保全が大事ですが、働く環境の整備も大変重要です。森林の手入れというものは、ただ木を切ればいいというものではありません。大変な重労働で、伐採や搬出といった作業は人力だけでは不可能でしょう。20年、30年と将来を見据えで計画的に植林し、間伐を行い、森を育て、森林管理計画をつくって経営として成り立たせなければなりません。担い手となる方々にとっても、将来世代に良い森林環境を残そうというやりがいを持ってもらえるようにしなければなりません。そのためにも路網を整え機械をきちんと使える職人を育てるとか、使命感、働きがい、労働条件などを整え、魅力ある産業にするが必要です。
自然林は切り出すだけでも一苦労ですし、切った木をそのままにしておけば雨で流木となって人的被害を出してしまう恐れがあります。だからといって、ただやって下さいでは建設業と同様、担い手不足は解決できません。昔は山を持っている人は裕福という時代があり、手入れが行き届いていました。それを思うと、山林経営が成り立つような環境を整備していく必要があると思います。