「担い手3法」(改正公共工事品質確保促進法、改正建設業法、改正公共工事入札契約適正化法)がこの4月1日に全面施行され、公共発注者の共通ルールとなる「運用指針」に沿った発注事務が始まった。公共工事品確法の改正に尽力した自民党の佐藤信秋参院議員は法の趣旨を具体化するために発注者が連携し、互いに補い合うことや、実例を一つ一つ積み重ねていくことの重要性を指摘する。佐藤氏にあらためて話を聞いた。
――担い手3法が全面施行された。
「全国津々浦々の建設業者が仕事を続けながら、東日本大震災のような災害発生時に道路の啓開や倒れそうな建物を支えるといった活動に従事できるよう備えてもらわなければならない。地域の安全を支える建設業の存在は行政にとっても必要だ。担い手3法はそのための環境を整えようという趣旨で制定されたものだといえる」
――改正公共工事品確法で運用指針を定めることにした狙いは。
「建設産業に若者が入り、継続的に経営できるようにするためには、仕事の量と質の両方を確保することだ。量については、公共投資の確保とそれに付随して出てくる民間投資の両面で確保する。質については、改正公共工事品確法で明記した受注者の適正利潤確保に発注者が責務として取り組み、それを基に労働条件の改善につなげるサイクルを築いていく」
「国や都道府県から市町村に至るまで、工事を発注する際にそうした配慮が行き届くよう、共通認識を持ってもらうために運用指針を定めることにした」
――運用指針を浸透させるためにはどのような取り組みが必要か。
「各発注者が連携する場として『地域発注者協議会』が設けられた。重要なのは、そうした場での成果を実際の発注事務に反映させることだ。協議会を通じて相互に補完し合ったり、発注者支援も活用したりして、運用指針に示された内容を実のあるものにしていってほしい」
――国土交通省は、適正利潤が確保できるよう積算基準を改正し、適正な工期設定や施工時期の平準化といった取り組みにも着手している。
「例えば10月に工事が発注され、冬場に雪が降って仕事ができないまま翌年3月末に工期を迎えるようでは厳しい。そうした場合に債務負担や繰り越し制度を活用するなどして、3月末工期を延ばすような措置が求められる。そのために財務省や会計検査院、公正取引委員会などと、どのような手だてが必要か十分に詰めておかなければならない」
「当初5億円だった契約が設計変更で6億円に増えるような場合、現行の予算制度の中でどのようにやりくりするか、案件によってもさまざまな工夫があるはずだ。実例を一つ一つ積み重ねながら、担い手3法の精神や運用指針に示された共通ルールを具体化してほしい」
――政治の立場からは担い手3法の運用にどう関与していく。
「細部にわたって何か言っていくことはないが、必要に応じて運用面の改善を繰り返すことは必要だ。虚心坦懐(たんかい)に意見を聞き、みんなで検討していけるようにしたい」。