国土交通省は11日、土木工事積算基準の改定内容を発表した。20年ぶりに一般管理費等率を見直すとともに、下請企業への十分な外注経費を手当てするため、現場管理費率も改める。工事価格3億円の道路工事をモデルケースとした場合、予定価格は3%程度上昇するという。また、大都市以外の市街地(DID)における補正係数の改定や標準歩掛の新規制定、施工パッケージ型積算方式の拡充なども行う。土木工事共通仕様書には、適正な請負代金での下請契約締結など受注者責務を追記する。一連の改定により、“改正品確法対応型”の積算基準が誕生する。受注者が中長期的な担い手の育成・確保に要する適正利潤を得られるよう、市場価格や施工実態を的確に反映した予定価格が設定できる環境を整える。入札期限が4月1日以降の工事から適用開始する。
一般管理費等率は現在、工事原価500万円以下、500万円超30億円以下、30億円超の3つに区分し、「7.22%−14.38%」の間で設定している。これを「7.41%−20.29%」に引き上げる。
また、純工事費700万円以下、700万円超10億円以下、10億円超の3区分で、工種ごとに設定している現場管理費率も変更する。道路改良工事の場合は、現行で「23.91%−29.53%」の範囲内になっているが、「24.71%−32.73%」に改める。
中間層に当たる金額区分はいずれも、価格に応じて率が変動する仕組みになっており、小規模な工事ほど増加率が高くなる。30億円超などの大規模工事は、ほぼ現状のままで微増が見込まれる。
工事価格3億円の道路改良工事を例にとると、金額ベースの一般管理費は約20%、現場管理費は約5%増加する計算だ。予定価格に与える影響はそれぞれ2%、1%程度で、合わせて約3%の上昇につながるという。
企業側の応札行動は低入札調査基準価格付近に張り付く傾向にあるが、予定価格の上昇に伴い、基準価格も2%弱の実質引き上げになる模様。また、2月に全国全職種平均で4.2%の上昇となった公共工事設計労務単価は、モデルケースの場合に予定価格を約1%押し上げる効果があると見られ、今回の一般管理費などの改定と合わせると、予定価格は4%程度上昇することになる。
一般管理費等率などの引き上げを実現した背景には、最新の実態を的確に反映させたことのほかに、担い手確保に必要な適正利潤という観点を踏まえ、実態調査で得たデータの扱い方などを工夫したことがある。例えば、担い手の育成・確保に対する投資余力がない赤字企業のデータを反映対象から外すなどの試みを行ったようだ。
国交省の田村秀夫官房技術調査課長は「品確法の改正で発注者の責務に、担い手確保のための適正利潤確保などが明記された。特に若い人の確保が建設業の大きな課題になっており、しっかりと若者が活躍できる建設現場にしなければならない。今回の積算基準の改定は、適正な予定価格の作成や適正価格での契約に向けた一歩になる」と話す。
また、山内正彦総合政策局公共事業企画調整課長は「発注者として、日々刻々と変化する現場実態に対応できる積算基準を整えなければならない。そのことが建設産業の健全な発展につながり、さらには社会インフラの整備やメンテナンスの品質向上、地域防災力の強化にも寄与する。元下、下下、会社・社員間でも適正に反映されることを期待する」と力を込める。
一連の改定では、契約図書の一部である共通仕様書も改め、受注者側の責務を追記する。工事の下請負に関する条文に適正な請負代金での下請契約締結、施工管理の条文に作業員の労働条件や安全衛生などの改善に努めなければならないと記し、受発注者間の約束事として明文化する。
【土木工事積算基準等の主な改定ポイント】
◆土木工事標準歩掛の改定
- 補強土壁工(大型長方形壁面材)、連続鉄筋コンクリート舗装工の2工種を新たに制定
- 道路打換え工、欠損部補修工の2工種で小規模施工歩掛を追加
◆一般管理費等率・現場管理費率の改定
- 工事価格3億円の道路改良工事で、一般管理費は約20%、現場管理費は約5%増加
- 上記ケースで予定価格は約3%増加
◆市街地(DID)補正の改定
- 鋼橋架設工事、電線共同溝工事、道路維持工事、舗装工事は共通仮設費率を1.3倍、現場管理費率を1.1倍
◆施工パッケージ型積算方式の拡充
- 小規模、人力工事や維持工事を中心に17施工パッケージを改定
- 10月から111施工パッケージを追加導入
◆土木工事共通仕様書等の改定
- 適正な請負代金での下請契約締結など受注者責務を追記