国土交通省は、直轄土木工事の積算基準を改定し、15年度から適用する。受注者の適正利潤確保を定めた改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の趣旨を踏まえ、予定価格のうち受注企業の本社経費を算出するための一般管理費等率を引き上げ、外注経費を含めた現場管理費率も同様の趣旨で引き上げた。一般管理費率の見直しは20年ぶり。3億円程度の道路工事の予定価格を3%程度押し上げる効果があるという。土木工事標準歩掛かりも併せて改定した。15年度から適用する。
従来の一般管理費等率は、工事原価に対応して7.22〜14.38%までの幅があり、額が小さいほど高い率を使って算出している。今回の改定ではこれを7.41〜20.29%に引き上げた。同様に純工事費に対応し工種ごとに設定する現場管理費率は舗装工事の場合、従来の16.08〜36.27%を16.52〜39.39%に引き上げた。
予定価格3億円程度の道路工事では、一般管理費等率の改定で2%、現場管理費率の改定で1%、予定価格の押し上げ効果があるという。
改正公共工事品確法では、施工者の適正な利潤の確保が発注者の責務と規定された。適正利潤や人材育成・確保に必要な費用を予定価格に反映させるのが今回の見直しの狙いだ。
今回の改定では、人口が集中する市街地(DID)での間接工事費の補正係数も見直した。現道上で工事を行う▽鋼橋架設工事▽電線共同溝工事▽道路維持工事▽舗装工事−の4工種で変更。従来は共通仮設費率に2.0ポイント、現場管理比率に1.5ポイントそれぞれ加算していたものを、対象工種に限って改定後はそれぞれの最新率を共通仮設費は1.3倍、現場管理費は1.1倍する。大都市補正を採用している東京特別区や政令市などを除き、DIDで行われる工事に取り入れる。
積算基準の改定に合わせ、契約書の一部となる土木工事共通仕様書も改定した。改正公共工事品確法で、受注者の責務として適正な額で下請契約を締結することが求められていることを共通仕様書にも記載。作業員の労働条件、安全衛生など労働環境の改善に努めることも明記した。新たな積算基準は、直轄工事で4月1日以降に入札書の提出期限日を迎える案件に適用する。10日付で各地方整備局に通知したほか、関係機関や地方自治体などにも同様の内容を参考送付した。地域ブロック単位で設置している地域発注者協議会でも今後、改定内容を示し、参加する自治体と情報を共有する。
適正価格で担い手確保へ
15年度に適用する新たな土木工事の積算基準について、国土交通省の田村秀夫官房技術調査課長と山内正彦総合政策局公共事業企画調整課長は11日、日刊建設工業新聞などの取材に応じ、田村課長は「若い人たちが活躍できる建設現場にするために適正価格で契約する第一歩になる」と強調した。
改正公共工事品確法では、将来の担い手を確保するために、受注者の適正な利潤を確保することが発注者の責務としてうたわれた。田村課長は「法改正の趣旨を踏まえ、20年ぶりに一般管理費等率の改定を含めた見直しを行った」と指摘。山内課長は「日々刻々と変化する現場の実態を反映して予定価格をつくることが建設産業の健全な発展とインフラの整備、メンテナンスの品質向上につながる」と述べ、発注者と元請企業との間で適正な積算基準に基づいて契約が行われ、下請代金や労働者の賃金の支払いが行われていくことが重要との考えを示した。