2014/12/10(水)
新聞記事
平成26年12月10日 建設工業新聞



国交省
「歩切り」定義示す
自治体にリーフレット
総務省との調査で改善促進







国土交通省は、公共工事の入札に当たって予定価格を根拠なく引き下げる「歩切り」の違法性や定義を示したリーフレットを作成し、地方自治体に配布した。総務省と共同で行う実態調査の前に歩切りの違法性を理解してもらい、予定価格の設定に問題があれば自ら改善措置を講じるよう求めるのが狙い。調査で歩切りが疑われた場合は、追加調査や個別ヒアリングを実施。必要に応じて個別発注者名を公表し、改善を促す。

実態調査については、9日付で総務省と連名による回答依頼を自治体に出した。

改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で予定価格の適正な設定を発注者の責務と位置付けられたのを受け、改正公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づき9月30日に閣議決定した適正化指針では、歩切りが公共工事品確法の規定に反する行為であることが明確化された。

実態調査では、15年1月1日時点での「歩切り」の有無と、歩切りを行っている場合の見直しの検討状況などを柱に同30日までに回答してもらう。

実態調査に回答してもらう前提として国交省が今回配布したのが、「『歩切り』の廃止による予定価格の適正な設定について」と題したリーフレット。

同省はこの中で、歩切りを根絶すべき理由を明記した上で、市場の実勢価格を的確に反映した積算による予定価格の適正な設定に取り組むことが重要だとあらためて強調している。

どのような行為が歩切りに該当するかも提示。予定価格を算定する際、慣例によって設計書金額から一定額を減額したり、予定価格の漏えいを防ぐ目的で無作為のランダム係数を乗じて設計書金額から減額したりする行為などを列挙した。

国交省では、リーフレットで示した歩切りの定義が、自治体や議会、地域の建設業界などで共有されることを期待している。実態調査を契機に改善措置を講じるだけでなく、地域単位で設置している発注者協議会などを通じて各発注者が協力するなどして、健全な市場の形成に取り組むことも促していく考えだ。

国交省は今後、毎年財務、総務の両省と共同で実施する入契法に基づく実態調査などで改善措置をフォローアップする方針だ。「歩切り根絶に向けて粘り強く取り組んでいきたい」(佐藤守孝入札制度企画指導室長)としている。

「歩切り」に該当する行為

  1. (1)慣例により、設計書金額から一定額を減額して予定価格を決定
  2. (2)自治体財政の健全化や公共事業費の削減を目的に、設計書金額から一定額を減額して予定価格を決定
  3. (3)一定の公共事業費の中でより多くの工事を行うため、設計書金額から一定額を減額して予定価格を決定
  4. (4)追加工事が発生した場合に備えて、予算の一部を留保することにより、補主予算に係る議会手続きを経ずに変更契約を円滑に行えるようにするため、設計書金額から一定の額を減額して予定価格を決定
  5. (5)予定価格の漏えいを防ぐため、設計書金額にシステムで無作為に発生させた係数を乗じることにより減額して予定価格を決定。事務の効率化のため、設計書金額の端数を切り下げて予定価格を決定等
※(5)については、その減額や切り下げが、入札契約手続きの透明性や公正性の確保等を図るため合理的なものであり、かつ、極めて少額にとどまるときには、やむを得ない場合があると考えられる。