2014/6/6(金)
新聞記事
平成26年6月6日 建設通信新聞



動き出す
改正品確法<5>

”主役”になって地域を考える
協議の場で本音の議論を







大手、地域建設業を問わず、「改正品確法」に対する建設業界の期待度は高い。大手ゼネコンにとっては設計変更など現場の円滑施工、地域建設業にとっては地方自治体の発注方法の改善に対する期待だ。だが、脇雅史自民党参院幹事長が「法律の精神に基づき、運用する工夫が必要だ」と語るとおり、本当に“新しい世界”を生み出すのは発注者の運用にかかっている。

「強制的に自治体に守らせるようにしてほしい」。地域の建設業から上がるこうした声に対しても、脇幹事長は「地域が地域のあり方を考えながら、法律の枠組みの中で工夫しなければならない」と語る。国が自治体を強制的に指導するのは改正品確法の精神ではなく、自治体が地域の将来を見据え公共施設や地域を守る担い手の確保のあり方を自ら考えることが改正法の中核的精神だからだ。

改正法では、公共工事の性格や地域の実情などに応じた入札・契約方法を発注者が選択できるような運用指針を、国が策定するという項目が新たに設けられた。運用指針は、工事・業務を発注する際の発注方式の選択肢や、選択する際の考え方、設計変更・工期設定などの適切な実施のあり方などを示す自治体向けの発注事務ガイドラインとなる。これにより国が自治体の発注・施工管理・維持管理において取るべき行動の道筋を示すツールが初めて整う。国土交通省では、各ブロックで自治体への説明会を開き、目的と理念、発注者の責務についての考え方などへの理解を深めてもらう考えだ。

地域の公共施設維持管理業務を受託しているある地域建設会社社長は、「改正品確法の理念には大賛成だ」としつつ、維持管理における複数企業の共同受注について「地域によって大きく状況が異なる。事情を考慮せずに発注方式が決められると、大混乱する可能性も」と指摘する。自治体が自らの地域の実情を理解した上で、発注方式などを決めなければ、決して地域建設業にとって良い法律にはならない。大手ゼネコンが期待する設計変更の適切な実施なども、現場で受発注者がともに課題解決を考える環境が整わなければ、改正法は“カラ条文”となりかねない。

自治体と地域の建設業、発注者と受注者が本音でコミュニケーションを取り、将来の目指すべき地域の姿を考え、地域を守るために必要な手段や担い手確保の施策を考えなければ、自治体・発注者の意図と建設業の実情にズレが生じ、改正品確法の精神を全うできなくなる。

こうした意識を基に、熊本県建設業協会や石川県建設業協会など既に改正品確法の適正運用に向けて自治体との協議に動き出した団体もある。改正法では、自治体と地域建設業が協議する場を設けることが明記されているわけではないが、運用指針には自治体と地域建設業が協議する場を設けるよう記載される可能性がある。とはいえ、協議が、建設業界による一方的で形式的な“要望”になっては、真に地域を守るための担い手確保につながらないだろう。

品確法改正に奔走してきたある建設業協会の会長は、地域の建設業界にとってたとえ厳しい選択であっても、地域を守るため、担い手を確保するためになる道であれば、その道を選択する必要もあるとの思いで業界改革に取り組んできた。大手、地域に限らず、建設業自らが“主役”となって、目指す地域の姿、歩む道、受発注者の関係を発注者とともに考え、適切な形を作り上げていくことが求められている。

(おわり・坂倉弘晃、竹本啓吾)