公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の改正案取りまとめに中心的役割を果たした自民党の佐藤信秋参院議員と共に、与野党聞の調整に奔走した渡辺猛之議員(参院国土交通委員会筆頭理事)は、十数年来続いた公共事業不要論とそれに伴う「安ければ良い」という風潮にやり場のない憤りを感じていた。
渡辺氏は、地域の建設業界が疲弊した末に、災害対応ができる企業がいなくなることを懸念。疲弊の元凶とされるダンピング受注を防止する公共工事品確法改正を是が非でも成立させなければならないと考えたという。
公共事業や建設業界に逆風が吹く中、東日本大震災や各地で相次ぐ台風や豪雨などによる災害の被災地では建設業界の奮闘ぶりが際立つ。これが、災害時に業界が果たすべき役割を多くの人が再認識する大きなきっかけになったようだ。
「地域の建設会社の存在がいかに大切か、野党にも理解してもらえたと思う」。渡辺氏は公共工事品確法の改正が実質審議のない「委員長提案」で通った背景に、地域を守る建設業界の重要性を与野党議員ともに理解したことを挙げる。
景気が上向いてきが、業界環境は依然厳しい。ダンピング受注、下請や労働者へのしわ寄せ、技能者の処遇悪化、若者の入職減少、高齢化の進行…。将来の担い手確保への不安は業界内で日増しに高まっている。
こうした問題に真正面から取り組もうと自民党は昨年1月、公共工事契約適正化委員会(野田毅委員長)を設置。技能労働者への適正な賃金支払いなどから始め、抜本的な課題に対応するための法改正の議論へと発展させた。国土交通省も中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)などを利用して制度面からの議論客進めてきた。
複数の関係法が議員立法と政府提出の両輪によって改正された今回のようなケースは珍しい。野田氏はこれで品質と担い手確保は「国策」になったと力説する。ダンピング防止と「適正利潤」が法律に明記されたことは、発注者の意識改革を促す上で大きな意味を持つことになりそうだ。
改正法の趣旨を市町村などにも浸透させるために「(運用上の)不具合があれば、政治の場に声を届けてほしい」と渡辺氏は呼び掛ける。それには業界が改正法の内容をよく理解し、あらゆる場面で声を上げていくことも重要になる。
(編集部「三位一体改正」取材班)