2014/2/7(金)
新聞記事
日本工業経済新聞社




品確法改正で明確に
佐藤信秋参議院議員インタビュー
建設産業は「ふる里の守り手」








公共工事品確法の改正に向けた検討が最終局面に入っている。日本工業経済新聞社では、自民党・品確議連の公共工事契約適正化委員会法制化プロジェクトチームで座長を務めている佐藤信秋(さとう・のぶあき)参議院議員にインタビューし、背景やポイントを聞いた。佐藤議員は「ふる里の守り手」である建設産業を健全に発展させるためにも、発注者責務に「中長期的な担い手確保」を追加する重要性を指摘。またダンピングを防止し、最低制限価格などを引き上げる必要性を強調した。新たに位置付ける交渉方式については、二種類の入札契約手続きフローを明確化するという。その一つは、適用工事を大規模で難易度の高い案件に限らないという見解を示した。

―公共工事品確法の改正に向けた検討が始まった背景について

佐藤 災害時、いざという時に、その地域にいる建設産業の人たちが出動して障害物を片づけないと、自衛隊も消防隊も通れない。建設業就業者数は約500万人と言われているが、ふる里の守り手として、非常に大きな役割を果たしている。実は普段から雇用と暮らしを守っている。普段の話をしてもなかなか国民の皆様にご理解いただけなかったが、災害続きの中でようやく、何かあったら、地域の建設産業の人たちが色々してくれているということにご理解をいただき始めた。公共工事はまるで悪いものであるかのように言われてきたが、本当にそうですか。普段から雇用と暮らしを守り、いざという時には出動してもらう。ふる里の守り手、担い手としての建設産業はどうやったら、きちんと働いていけるのか。そういった意味で「中長期の担い手」という言葉を、発注者の責務として改正品確法の中に入れる。

―ひとつの工事だけでなく、中長期の品質確保、建設業行政の視点がある

佐藤 品確法のもともとの精神は、公共工事は安ければ良いというものではなく、品質の良いものをつくってもらうということ。ただ最近の建設産業の疲弊の仕方を見ていると、中長期の担い手をしっかり位置付けないと、まともな産業として続けていけない。そこが一番重要。同じ品質を確保するにしても、続けてやっていけるようなやり方にしなければならない。一件の工事だけをとらえて、ほかの黒字分をつぎ込んでもやると、みんなそうなってしまった。仕事をすれば赤字、しなくても赤字というのでは駄目。良い仕事を続けてやってもらって、建設産業も継続してやっていけるというのが基本。若者が入ってくる産業に戻していくにはどうするかという議論。一つの仕事を安ければ良いとやっていたら、ほかの仕事も全部そうなり、この15年間デフレとなった。

―品確法改正による具体的な取り組みについて

佐藤 まずダンピングを防止。(07年度までは)もともと低入札調査基準価格が大体76、77%だった。一般管理費は計算上、0%で良いとされていて、会社を継続してやって下さいという意思が入っていなかった。しかも低入札調査において、「できます」と言われたら「どうぞ」というのが公共工事の契約の仕組みだった。それでダンピング防止といっても、もとの仕組みが無理。低入札調査基準価格は4回引き上げさせた。また今回の品確法改正でも、ダンピング防止をきちんと書く。調査基準価格や最低制限価格をきちんとつくる。一つの仕事だったらできるという思想を転換させ、継続してやっていけるような公共調達にしていかないと、品質確保をできるわけがない。また国の仕事については、(実質的に)調査基準価格を下回ったらだめということにした。下回ったら技術評価の点数はあげられないということにしている。

―不調・不落の防止について

佐藤 一番の問題は、役人の積算価格ではできないということ。新国立競技場のケースで考えてみるとわかりやすい。最初、概ね1300億円でどういうものができるかと言って、できそうにない設計をみんなが良いと言った。今になって、その金額ではできないから約1700億円だと言っているが、それも最終的にはわからない。こういった場合に本当は、競争して、一番優れている相手とネゴシエーションで決めれば良い。世界中のほかの国はそうしている。一旦、予定価格を決めたらもう動かせないというのは日本だけ。なぜ役人が積算した価格が正しいのか。標準積算で対応できる、みんなが慣れている仕事ならばともかく、元来は一品生産。現場の状況はそれぞれ違う。

―交渉方式について

佐藤 入札して不調・不落、その後で予定価格を組み直すためにもう一回同じサイクルを作って、また二回三回と不調・不落になっているのが沢山出てきている。そもそもどういう設計、仕様かというのは、発注者が決めきれないことが多い。決めようがないものは、例えばいくつかのコンソーシアムからコンペで出してもらう。オープンの場で、どれが良いのかを決めていくというのが、一つの方式。予算はこれ位なので、その範囲内でやって下さいというのが、現行の品確法では明確化していないので、やれるようにする。公告、技術提案公募、交渉、予定価格と落札者決定という流れ。

―交渉方式のもう一つの手続きフローとは

佐藤 例えば災害後の現場など、誰も細かくきちんとした設計ができない。でも日常、そこにいる地元の人たちが、自分たちならばこうやるというのを交渉方式の手続きに乗せる。役人が調査・設計を出してやっていく通常の方式ではやりきれないし時間もかかると思ったら、交渉方式を使えば良い。地元のいつも仕事をしてくれている人たちに、あなた達ならどうする、予算はこれ位しかないけれど交渉しましょうというやり方。こういったケースのように、難しい工事だけではなく、仕様が確定できないような工事で交渉して絞り込んでいく。

―交渉方式は、予定価格の上限拘束性を外すことになる

佐藤 現行では不調になった時に見積もりをもらって、また手続きに時間をかけている。予定価格を決める前に、標準積算ができないような部分の見積もりを取って、予定価格を決めて入札する。不調・不落になりそうな場合は、最初から見積もりをとって積算することを明確にする。今は不調でもう一度予定価格を組み直して、自治体の場合は議会にかけ直すなどしてもう一回、二、三カ月かけてやっている。交渉方式で、そうしなくても良いようにする。

―建設産業の近代化にむけて

佐藤 働く人の賃金、給料などをきちんと評価しないといけない。13年度当初、労務単価を全国平均で15%上げさせたが、この内訳は、10%が季節調整で、5%が法定福利。12カ月のうち、実際に稼働できているのを仮に11カ月とすると、手待ちが1カ月分ある。労務費調査は10月の働いている時期に調べている。手待ちの1カ月分はどうするのかということを、以前から主張してきた。雇い主は手待ちの1カ月分を含めて年間で延払いしている。1カ月失業させているわけではない。法定福利については、保険未加入企業は公共工事の元請、一次下請から外すと言っても、(労務単価を上げて)実際に行動に移さなければ、みんな動くわけがない。だから本人負担分が15%で三分の一の人が入っていなければ、平均単価は5%乗せなければ保険加入は言えないと主張し、各方面から了解を得た。上げるというよりは、むしろ正当に評価するということ。また歩掛も見直しが必要。昔は30代の若者がセメント袋を多く担いでいたかもしれないが、現場に50代の人が多くなっているのが現状ならば、見直しが必要だ。