2013/8/6(水)
新聞記事
平成25年8月6日 建設通信新聞


永田町“夏の陣” 霞が関“秋の陣”
来年度予算編成
概算要求基準、特徴は「上限なし」


今週内の閣議決定を目指す「中期財政計画」と「2014年度予算概算要求基準」をめぐり、与党、各省庁の動きが本格化し始めた。最大のポイントは来年度概算要求基準において上限予算額(キャップ)がないことだ。キャップがないため、防衛費や公共事業関係費など裁量的経費(13.2兆円)が概算要求時点で一律10%削減されても、今秋以降に固める裁量的経費の上乗せ分である「優先課題の推進(別枠要求の特別要望枠)」の額次第では、今年度並みかそれ以上の予算確保も可能だ。概算要求時点でキャップがない異例の来年度予算編成へ、与党自民党も議論を開始した。

5日の自民党の政調全体会議で、佐藤信秋参院議員は出席していた財務省幹部にこう念押しした。

「71兆円ありきではないよね」

政府が5日の自民会合に提出したのは、2日の経済財政諮問会議で提示された、14年度予算全体像案や中期財政計画案、概算要求基準基本方針など。この中で佐藤議員は財務省が説明しなかった、これまで概算要求基準で行われてきた予算額に上限額のキャップをはめる方式を今回採用しないことについての確認をあえてしたのだ。

民主党政権は、年金・医療など社会保障費が自然増として毎年1兆円ずつ増加することに対応するため、概算要求基準の中でキャップをはめた上で、公共事業費などを削減してきた。

これに対し、今回の概算要求基準は、消費税増税を実施するか、政府がまだ判断していないため、概算要求段階で税収の見込みを算出できず、全体のキャップを設定できない状態にある。佐藤議員は「キャップがないことが民主党政権と自公政権の大きな違い。来年度予算額は今年度予算額(70.4兆円)より上回ると理解している」とし、裁量的経費が一律で10%削減されても、約3兆円規模との観測もある裁量的経費に上乗せされる「優先課題の推進」枠に、防災や成長基盤整備として公共事業関係費が加算されるとの読みがある。

ただ自民党はこれまでの与党時代から、各省庁の概算要求に対し政調傘下の各部会で予算要求内容について議論・事前承認の形式を採用している。そのため、概算要求基本方針の閣議決定以降、自民の各部会は各省庁が政府に提出する来年度概算要求内容に対する議論を今後、加速させる方針。

一方、各省庁は安倍晋三首相の消費税増税判断の行方と増税、景気動向を踏まえた来年度税収見込み額が、来年度予算額の積み増しにつながる「優先課題の推進」枠の額に影響を与えるため、概算要求だけでなく今秋以降に固まる「優先課題の推進」枠の動向を見据えた、2段構えの対応が必要となりそうだ。