2013/6/10(月)
新聞記事
平成25年5月29日 建設ジャーナル


佐藤のぶあきインタビュー
国民生活守る産業を守れ!
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丸山 東日本大震災をはじめとする災害を経て、法改正等に尽力されてこられましたが。

佐藤 災害対策基本法で言いますと、大規模災害は有事立法的なものにしていかなければならないと思います。

東日本大震災での対応で、現場で何が困って、何が出来たかということを見た時に、災害対策基本法の中で変えていくべきだったこと、変えていかなければならなかったことから考えますと、有事立法的な対応ができるという法的措置をしっかりと裏付けておく必要があります。

まず一つは国が予算面での責任を持ちますというメッセージを出せる仕組みにしなければいけないということです。特に費用の面でいえば、国が全面的に対応をしますというメッセージが出せる法案の体系にしておかなければいけない。残念ながらその点はこれからの議論で、これをしっかりと直しておかなければいけないと思っています。

二つ目に、迅速な対応という面からいえば、まず市町村がどう対応をすればいいか。それは普段の準備が必要です。それと国が一体となって動くということ。市町村が活動できる情報連絡、体制にしておかなければならないし、県にも頑張ってもらわねばなりません。

最前線である市町村の対応と全体を見て被災の様子を見ながらどこが一番大変なのか、全貌の把握と対応を集中させること、これは国の仕事です。地方自治体と国の機能を強化するのが二番目に重要で、連携強化が二番目に大切になってきます。

三番目に救助、救援、緊急復旧、復興へ向ってという、その足取り、手順を確実なものにしておくということが大事だと思っています。 この三つそれぞれについて、今の法体系では不十分なところが大規模災害時で見えてきたわけです。法改正を現実の課題に添って行い、東日本の大震災を踏まえてそれぞれがどう規定しておくか、訓練しておくか、浸透させておくかということが今後大切だと思います。

丸山 非常に重要な点ですね。

佐藤 災害時においては、自治体の負担の問題があります。国からの災害救助法適用の問題がからんできますので、そういったことに対して心配なく初期対応を取れるようにしておくことが大切で、基本的には災害対策基本法と災害救助法の問題になります。

予算の手当て、財政的な裏付けをしっかりしておきながら修正すべきものを修正していかなければならないわけです。最前線である市町村と国が災害対応、応急復旧に集中できる。県はその橋渡しを十分にするという機能を持つことが必要です。

東日本大震災のような大規模広域災害では、一つの県でなく複数の県が同時に被災をします。そうすると、限られた資源を投入するために直接国が、自衛隊、警察、消防、整備局のような実行機関が入っていくわけですが、それに対して市町村が対応をし、住民との間を橋渡しすることになるわけです。その円滑な仕組みが今のままでは不十分ではないかというのが私の考えです。そうすると対応する費用、予算の面からも直していかねければならないと思っているわけです。

丸山 国土強靭化基本法も早期成立が期待されますが、それに対する思いは。

佐藤 国土強靭化基本法で重要なことはバックアップ機能をきちっとしましょうということです。そこから出てくるのが新潟県、日本海側の機能強化を図りましょうということです。いざという時の、大規模災害に対するバックアップ機能を考えることです。それは一極集中集中、一軸集中ではだめだというのは当たり前のことで、それには国土のあり方からいえば日本海側の国土軸が重要になってきますし、新潟の拠点性を高め、強化していくことが重要です。日本全体のバックアップ体制、地方分散型の機能強化が一つの命題になると考えています。

二つ目には国民の災害に対する意識を高めることです。エネルギー、情報通信の問題もあります。災害に強いまちづくりに対し意識を高めてもらうことも重要です。それは建築物の耐震性であるとか、インフラの耐震性の強化であるとか、意識を高め、公共の投資と民間の投資が一致した方向で一緒にやっていきましょうということです。

三つ目に、そういったことを計画的に着実にやっていきましょうと。

すぐに首都直下地震や南海トラフが動くかもしれません。じゃあ間に合わないじゃないかという議論になりますが、そうではなく、社会生活がその対応に向って営々と努力することが大切であるということです。

それが国全体の計画づくりにつながります。目標を定め、着実にやっていく、しっかりとした計画のもとでやっていこうということです。

それには国民のご理解をいただいて、国民運動でやっていかなければなりません。防災であり減災であり、老朽化対策を含めて国民運動でやりましょうというのが基本法をつくる意義であり、ベースだろうと思います。

丸山 そのためにも役割の大きな建設産業の再生は重要ですね。

佐藤 コンクリートから人へということで、営々として努力すべきことを脇に追いやり過ぎました。予算を削り過ぎたということです。とはいえ、ただ公共事業を増やせといっているわけではありません。必要最小限のものも確保できていないのが実態だということです。これは大事なことです。日本の社会経済、日本の国際競争力といった面からみても維持できないというところまで落してしまっています。その点を皆さんは危惧をしています。

そして、このままでは災害への対応がなくなっていきます。建設産業をこれ以上疲弊させることは、災害対応能力といった面からも限界を超えてしまいます。

480万人の建設産業に働く人たちが、普段は国土の整備や管理をやりながら、いざという時に、自衛隊24万人、警察・消防を入れてもはるかに多い建設業の人たちが、いざという時に災害にも対応をしてもらえるということで国土の保全や災害対応ができるのであって、建設産業が果たしている役割というものを、防災対応能力という面からも評価しなければならないと思います。

それを大事な問題として捉えていくことが必要だと思います。

東日本大震災時に行われた「くしの歯作戦」が典型的ですよね。緊急的に災害対応をする。これは地元にいる、そこにいて活動する建設業がまず重機を持ち出して障害物を片付けて、被災地に入れるようにしたわけです。こうした最初の活動を、地道だけれど建設産業が支えているわけです。