政権交代を機に政府は、インフラ老朽化対策や防災・減災対策を前面に押し出し、12年度大型補正予算と13年度予算の具体化に乗り出そうとしている。東日本大震災や笹子トンネル事故発生などをキッカケとした安全・安心に対する関心の高まりを追い風に、長期展望に立った国土強靭化を目指す。しかし、インフラ整備や地域防災を担う建設業の疲弊が構造的な問題となっており、更なる産業政策が求められている。自民党の国土強靭化総合調査会副会長、公共工事契約適正化委員会次長である佐藤信秋参議院議員に見解をつかがった。
総点検を維持修繕へ
――インフラ老朽化、防災・減災対策の現状について。
道路や橋梁の老朽化は今後急速に進行すると言われている。20年後には建築後50年が経過した橋梁が6割超に達するとみられている。道路は管理者が国、高速道路会社、地方自治体と異なっており、点検の実施率や修繕計画策定率なども大きく異なる。国や高速道路会社が管理する橋梁は点検率、修繕計画策定率ともに100%だ。
国道の橋梁は定期点検を毎年約5000橋実施しており、約1万6000橋で対策が必要だ。毎年約2000橋の修繕を実施し均衡状態を保持している。国道のトンネルは定期点検を毎年約260トンネル実施しており、約350トンネルで対策が必要。毎年約70トンネルの修繕を実施し均衡状態を保っている。
一方、市町村の橋梁修繕計画は策定率が50%と低い現状にある。技術基準類の不備や財政不足などが点検が進まない大きな要因となっている。笹子トンネル事故を契機に国交省がインフラ総点検をうち出しており、おもに市町村を対象に各構造物の総点検実施要領を策定した。さらに12年度の大型補正予算で地方自治体の点検や修繕の支援強化を図った。防災・安全受付金の活用により、橋梁以外のトンネル、舗装、法面、道路附属物の点検実施率は補正前の49%から補正後に84%に上がっている。道路点検については道路法改正関連法案も今国会に提出されている。
インフラ老朽化、防災・減災対策は、自民党の公約として政権交代後に重点施策としてうち出している。大震災以来、構造物の老朽化をはじめ、がけ崩れや孤立集落の問題などにきめ細かく取り組んできた。今後もしっかり対応していく。自治体施設を含めたインフラ点検を戦略的な維持修繕サイクルにつなげ、確立していかなければなまい。
強く しなやかな 国土形成を
――国土強靭化の課題・展望について。
大首都直下地震をはじめとする大規模災害に備え、『強くしなやかな国土』づくりを今後20年スパンを見据えつつ、着実に計画的に進めていくことが大事だ。災害が発生した際に互いに助け合うことが出来る、地域分散型機能を備えた国土形成とバックアップ体制の構築を目指す。建築物や構造物の耐震化やエネルギー供給、情報・通信ネットワークといったインフラ整備など、ソフト・ハードにまたがる機能のレベルアップを図っていく。
全体にまたがる本部の計画と地域ごとの計画を策定し、事業の目標や取組みなどを定める。公共投資だけでなく民間投資を含めた取組みを、トータルな国民運動として展開していく。
建設業 持続へ投資 見通し必要
――安全・安心を支えるインフラ整備の担い手である建設業者の体力疲弊が問題になっている。
この4年間、公共投資がどこまで削減されるかという不安の中で、地域の建設業者は経営危機に晒されてきた。大部分が赤字に陥り、若年入職者の減少に拍車がかかった。こうした厳しい状祝に直面しながらも、災害が発生時の地域防災の担い手であり続けてきた。公共投資削減の中で安くなりすぎた賃金が、こうした地域の担い手としての建設業を疲弊させている。
基幹産業である建設業が持続し得る経営環境を整えていくための『一定の投資の見通しをつくること』、公共工事を受注した建設業者が利益を出せる入札契約制度を確立すること、こうしたことは『発注者の費任』だと考えている。
入契改革は途半ば
――公共工事入札契約について。
設計労務単価や低入札価格調査基準の引き上げをかねてから私が主張し、関係機関に働きかけて、実現させた。
しかし入札契約改革は『途半ば』だ。基本的に、設計積算した価格を上限にするという考え方が違っている。この間題意識をベースに公共工事契約適正化委員会での新調達法制定の検討を進めていく。