人命保護を最優先し、政治・経済、社会活動の持続可能を目的に、国の計画・施策と地方自治体に対し、防災・減災と迅速な復旧・復興を行う取り組みを義務付ける「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案(強靱化基本法案)」が、国会に提出されることが確実となった。全政策に影響を与えるいわゆる「アンブレラ法」の強靱化基本法案が成立すれば、防災・減災に関する政策根拠の最上位理念・方針となり、自然災害多発国の日本で、あらゆる政策に防災理念を盛り込む「防災のメーンストリーム(主流化)」が実現することになる。
自民党は16日に開いた「国土強靱化総合調査会・災害対策特別委員会合同会議」で、公明党と最終合意していた「強靱化基本法案」について説明、了承した。
法案は、東日本大震災の教訓と、今後想定される南海トラフ巨大地震や首都直下地震を始めとする大規模災害から、国民の生命・財産の保護だけでなく、公共施設被害など経済に及ぼす影響を最小化することを基本理念・基本方針として明記。また、民間資金の積極活用も盛り込んだ。
その上で、政府が行う現状のインフラ施設などの脆弱(ぜいじゃく)性評価結果を踏まえ、国と都道府県・市町村は、国の各分野別計画や自治体のさまざまな計画の指針となる基本計画をそれぞれ策定。指針に基づいて、各計画は防災・減災の視点で政策の優先順位・重点化を図った上で具体的対策を実施する。
強靱化基本法案は、民主党も災害対策強化のための組織を政権担当時代から発足させており、法案趣旨には野党からも理解が得られやすいとして、与党提出ではなく、野党も含め与野党共同提出にすることも含め今後調整する。その場合は与野党協議の時間も必要で、国会提出時期がずれ込む可能性もある。一方、16日の合同会議では、既に自公防災・減災プロジェクトチームで、法案名称だけは合意していた「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案(南海トラフ地震特措法案)」の具体的法案内容についての協議を来週から開始することが報告された。
南海トラフ地震特措法案は、地震防災対策の推進地域を首相が指定し、指定地域では対策のための基本計画や推進・対策計画、津波避難対策緊急事業計画の作成を求める一方、対策費用や集団移転促進に関する規制緩和や、国の特例措置が想定されている。