五強による国土づくりで日本を再生する防災立国の実現をめざし、自民党の国土強靭化総合調査会副会長として「国土強靭化基本法」の作成作業に携わったそうですが、国士強靭化に向けての課題と展望は――
「五強」というのは、「強い絆、強いインフラ、強いふるさと、強いリーダーシップ、強い制度」を指し、基本的なコンセプトは「強くしなやかな国土をつくる」ことを意味する強靭化、いわゆる五強をつくることです。
去年の6月4日に衆議院に議員立法で提出したのですが、審議されないまま解散となってしまいました。
国土強靭化基本法案は、大規模災害時における我が国の政治、経済、社会活動の持続可能性を確保するとともに、多極分散型の国土形成をねらいに、国や地方自治体の責務や役割を規定するもので、早期に制定できるようにしたいと考えております。
全体的には4つの思想だといえます。
一つ目は、国土の地方分散型の住まい方、使い方ということでバックアップ体制を整えるということです。
これだけ甚大な被害を受けた宮城県ですが、早く復興して必ず来るであろう首都直下型地震や、南海トラフの大地震に備え、首都機能の分散も含めバックアップの拠点として頑張るんだという仕組みづくりです。
二つ目は、今後10年て200兆円の強靭化投資などと言われていますが、規模とか金額を決めてはいません。やろうとすることは被害を最小にするために、老朽化対策、ビルの耐震化対策、ミッシングリングの解消とか、強くしなやかな致命傷を負わないインフラ整備をきちんとすることと、エネルギー、情報通信とともに、町の防災・減災対策を民間建築物の耐震強化を含めて進める幅広い事前防災・減災をしっかりするのが強靭化の思想だろうと考えているのです。
この10年で何が失われてきたのか考えると、長期的、具体的な計画がないのが問題であり、三つ目として、事業目標などの具体的な長期計画を法案の中に位置づけるごとが必要と盛り込んでいます。今後20年の間には首都直下型や南海トラフの巨大地震が想定されており、日本がどのような対応策を講ずるのか注目されていますから、四つ目として、具体に形にあらわす強靭化法をきちんと世界に明らかにし、国民的合意のもとに、国民運動として具体化を進めることがのぞまれます。
大型補正予算についての評価と今後は――
景気対策のための大規模補正の効果は認めますが、国土強靭化の思想でいえば、実態のインフラ整備の点からは10年15年先を見据えた予算化が大切であり、きちんと形にあらわす意味でも、補正を少なくしても計画的着実な当初予算として盛り込んで執行すべきであろうと考えています。
東日本大震災での民主党政権の対応とあり方については――
政府の理解が遅く、規模が小さく、自由度が少なかったものですから、十分な効果・効用が適時的確に行われなかったことが問題で残念です。
一番の根幹は、政府が責任と予算をもつことをメッセージとして宣言すれば良かったのです。
従前大震災に対応する法律にはなっていませんから、緊急対策本部長の総理大臣がこういう方向でこうした予算を執行しますと言えば迅速な対応ができたのです。
一次補正で3兆円の予算で地方負担分が7,000億円もあったわけですから、とても長期交付税で手当といっても無理で、国が全部負担しなければ動かないわけです。
そこががれき処理などが遅れてしまった理由なのです。
私が7カ月もの間国が全部引き受けることを主張し、認めたのが10月ですから。
地方には負担させないと言えない政府の対応の遅れが問題で、野党でありましたが私としては要望の9割方を認めさせて、実現いたしました。
復旧工事におけるがれき処理など諸経費問題については――
宮建協の佐藤会長と専務からがれき処理の諸経費が計上されていないという話を聞いて、災害のあと建設会社が倒産するという例が多々あるという実態の把握につとめたところ、環境省の積算では運搬経費が計上されていないことから、道路維持管理の諸経費を参考に計上するよう1週間後に再通達させました。
宮城発信の改訂であり、全国に波及した特筆される事例と言えるでしょう。
また、今後人出不足、資材不足への対応についても発注者に求めたいと思います。
維持管理・更新を合めたインフラ整備での老朽化委対策については――
「コンクリートからヒトへ」ではダメです。
老朽化対策も含め一定の投資レベルを確保し、40年50年経った構造物について徹底した点検を行い、補強し、更新することが必要です。
予算は一度削ると増やすのが大変ですから、民主党政権で7兆円を3割切って4.6 兆円まで下げてしまい、老朽化対策はどうするのかという課題を残してしまいました。
そのためにも強靭化法の成立が急務です。
地元建設業界への期待と展望は――
対応が遅い政府と違って即応体制で大震災に対応したのが東北地方整備局と建設業界であり、はじめに、建設業冬の時代の最中に、東日本大震災が発生し、自ら被災したにもかかわらず、献身的に人命救助や早期啓開にあたっていただいた宮建協をはじめとして東北の建設産業界の方々に、国民を代表し感謝と御礼を申し上げます。私としては、復興を含め、10年〜20年の先を見通した強靭化拠点の整備展望を描き、そのフィールドで活躍できる建設会社に育ってほしいと願っています。
公共工事で工夫すれば利益が残せ、経営がきちんとできる環境づくりが大切だろうと考えます。
発注者の責任として、産業として継続できるよう、また若者が入職できる企業として持続継続できる建設業の確立が求められているといえるでしょう。