土木学会(山本卓朗会長)は、建設産業の国際展開支援方策についての具体策を盛り込んだ報告書をまとめた。日本のインフラ整備システムを一体で海外に展開する上での課題を整理し、具体的な方策を提案。日本のゼネコンの強みを生かせるPPP事業スキームの構築や、使いやすい貿易保険制度の開発などを提言した。海外の法体系を参考に会計法に代わる「公共事業調達法」を検討することも打ち出した。
報告書は、昨年3月に発表した提言「インフラチームジャパンを世界へ!〜Think Globally, Act Locally〜」を実現するための課題と具体策をまとめたもの。建設マネジメント委員会(委員長・小澤一雅東大教授)に設置した国際展開推進プロジェクト小委員会、国際連携プロジェクト小委員会、公共事業改革プロジェクト小委員会で個別テーマごとに検討。11日に開いた同委員会の研究成果発表会で報告された。
国際展開推進プロジェクト小委員会では、総合商社へのヒアリングを通じ、PPP事業者として総合商社が完工リスクの少ない日本のゼネコンに期待していることを指摘。ゼネコンが事業の川上段階から参画できるような「日本の強み」を生かせる事業スキームを構築する必要があるとして、国の支援の下、こうした事業スキームを構築できるようにするべきだと提言した。
貿易保険制度や海外PPP事業への金融制度の現状を調査した結果を基に、貿易保険については欧州の保険を参考にしたより使いやすい商品を新たに開発すべきだと提案した。
インドネシアの有料道路プロジェクトを念頭にインフラチームジャパンの構成メンバーを検討した結果、法律やファイナンスの分野については日系企業だけで対応するのが難しいことが判明。特に設計保険は現状では日本の保険会社から購入できず、海外の保険会社が不可欠だとしたほか、事業運営に当たってローカル企業とのパートナーシップが欠かせないことも指摘した。
過去の事例を基に、海外展開に当たっては進出企業の現地化・ローカル化が成功の条件だと報告。日系企業が円借款により40年以上事業を展開しているインドネシアは進出先として最適な国の一つだと結論付けた。
インフラチームジャパンの実現には、国が途上国のインフラプロジェクトの発掘を行う仕組みも必要だと指摘。海外展開を前提に国内の公共調達の仕組みも見直し、海外の法体系を参考にして会計法に代わる「公共事業調達法」の整備を検討するべきだと提案した。