公共調達の適正化に向けた新法制定を目指す超党派国会議員による「公共調達適正化研究会」の第3回会合が1日に開かれ、建設業界団体の提案が報告された。予定価格のあり方の見直しや、会計法などの枠を超えた入札を可能とする「(仮称)公共調達基本法」の制定、地域に貢献する工事を指名競争する「地域保全型入札制度」の実施など踏み込んだ要素も盛り込まれている。同研究会は、各団体の提案を参考にした上で新法案を取りまとめ、議員立法として今国会への提出を目指す。各団体の提案概要をまとめた。(編集部・牧野洋久)
同研究会に提案を行ったのは、日本土木工業協会(土工協)、全国建設業協会(全建)、日本道路建設業協会(道建協)、日本橋梁建設協会(橋建協)、建設産業専門団体連合会(建専連)。この5団体は、先月12日に開かれた第2回会合で実施されたヒアリングの対象となっており、その際に、入札契約制度に関する具体的な改善提案の提出を求められていた。
公共調達基本法制定で国際標準に(土工協)
土工協は、「(仮称)公共調達基本法」の制定や、現行制度で可能な対策の早急な実施、官公需法の適正な運用などを求めた。「予定価格制度」や「一般競争入札の原則」など会計法や地方自治法に基づく既存の枠組みを前提とせずに、国際標準に沿った新たな入札契約方式を導入するという提案だ。予定価格制度は撤廃し、標準価格的な位置付けにするべきだと要請した。技術提案や積算に多大な労力と経費をかけている状況を打開するため、2段階選抜方式の採用も提案。技術提案の内容などを審査し、入札に参加できる企業を5〜10社程度に絞り込む案などを示した。
さらに国際標準に沿った新たな入札方式として、交渉方式を提案した。技術提案の最上位企業とネゴシエーションを行う「2封筒方式」や、発注者・コンサツタント・施工会社がプロジェクトの初期段階から対等な立場で参画する随意契約的な仕組みの「パートナリング方式」「アライアンス方式」を具体例に挙げた。
早急に求める対応では、適正な利益を確保できるよう低入札価格調査の基準額引き上げを要望。現場管理費と一般管理費を100%に引き上げ、直接工事費の部分で競争する方法などを示した。技術力評価による指名競争入札の導入も提案。技術開発費や研究施設の評価など外形的な基準で企業をランク付けし、工事の難易度などに応じて応札参加企業を選ぶ方法を示した。施工能力点を付与して、施工能力を超える受注を防止する案も挙げた。
地域保全工事は指名競争で(全建)
全建は、行き過ぎた競争や、災害対応空白地域の発生といった問題点を念頭に対応策を提案した。競争環境の面では、入札参加企業を絞り込み、多くとも2〜5社による競争にするべきだと指摘。1億円程度よりも大きな案件では2段階選抜方式を採用するよう求めた。
1億円に満たない規模で災害対応や除雪など地域の安全・安心につながる事業については、「地域保全工事」と位置付け、5社程度による指名競争入札を実施する「地域保全型入札制度」の創設を提案した。地域に貢献している企業を指名対象とすることで、地域の持続性の確保や、建設業による地域貢献の促進につなげるというアイデアだ。維持工事や除雪など地域特性を重視する工事には3カ年程度の複数年契約を採用することも必要だとした。
予定価格のあり方についても見直しを要請。積算基準から算出した価格は「標準価格」と位置付け、積算基準と入札実績とのかい離を考慮した範囲内であれば、標準価格を上回っていても落札できる仕組みの導入を求めた。受・発注者間の仲介する第三者機関を立ち上げることも提案した。
発注者支援機関を設立し、発注者の体制に応じて調達への行政職員の関与を軽減する案も示した。低価格入札案件で完成時に下請契約実績などをチェックすることや、国と地方の役割分担の明確化、くじ引き入札の禁止なども要望した。
2段階選抜方式を原則に(道建協)
道建協は、2段階選抜方式を原則とすることを求めた。技術力や信頼性のある企業から設計・施工提案を求めて比較上位者を選定し、その企業との協議で設計や施工方法、費用などを決めるやり方を提案している。予定価格を標準的な価格を位置付け、提案内容によっては標準価格以上での契約も可能とする考え方も示した。
橋梁建設・保全の将来計画提示を(橋建協)
橋建協は、橋梁の新規建設や補修・保全などの将来計画をグランドデザインとして提示することや、技術を維持する観点から事業量を安定的に確保するよう要望した。提案事項には、予定価格制度の撤廃や、総合評価落札方式の改善、ダンピング対策(低入札価格調査の基準額引き上げ)などを盛り込んだ。
ダンピングを抑止する競争環境を(建専連)
建専連は、ダンピングの発生を抑止する競争環境の整備を求めた。優越的地位の乱用や指し値要求などを防ぐための公正取引委員会との連携強化や、適正工期、適正価格の設定、基幹技能者の活用、不良不適格業者の排除などが必要だとした。建設業許可が大手も零細企業も同じ要件で行われていることへの疑問も指摘した。