国土交通省は、東日本大震災で被災した公共工事の建設現場で破損・流失した建設機械の損害を補償する新たな仕組みの検討に入る。12日の参院国土交通委員会で、佐藤信秋氏(自民)の質問に対し、同省の大森雅夫官房建設流通政策審議官が明らかにした。現行の建設工事請負契約書でも、災害などで被害を受けた工事中の建設機械の損失補てんは一部認められているが、建設業界からは損害分に対する補償が小さく、被災した建設会社の経営悪化の一因になりかねないとして対応を求める声が上がっていた。
同日の国土交通委では佐藤氏が、公共工事の現場で使われていた建設機械が津波によって流されたり、破損したりした場合の損害額の補償状況などを質問。その中で、仮に受注者が損害額を受け取っても新たな建設機械の購入費には足りないと指摘し、建設機械の損害に対する補償内容を見直すよう国交省に求めた。これに対し同省の大森審議官が新たな仕組みを今後検討する意向を示した。
被災した建設機械の損害分の補償については、公共工事標準請負契約約款の第29条に規定。天災などで工事の引き渡し前に損害が発生した場合、被災前までの出来高分を対象に、損害額として請負額の1%を受注者が、残る99%を発注者がそれぞれ負担する仕組みになっている。
公示の損害額を計算する際には、現場に搬入している仮設物や建設機械器具の損害も対象に含まれる。ただ、建設機械の場合は被災現場(対象工事)だけに使用がとどまる例はほとんどなく、他の工事現場でも繰り返し利用されるのが一般的なため、発注者が負担する損害額は対象工事にかかわる機械の償却費(出来高支払い部分を除く)に限られ、その負担は新しい機械ほど大きくなる。
今回の震災で被災した建設機械の損害補償については、全国建設業協会(全建)も現ルールでは補償が軽微で、建設会社の経営悪化と今後の円滑な復旧・復興活動に支障を来す恐れがあると指摘。実勢価格での補償を求める要望を、7日に開かれた民主党の国交部門会議に提出している。